2005年は,あらゆる領域でオープンソースが“常識”になった年だった。Linuxは基幹サーバーの標準OSになり,携帯電話OSとしても1000万台を出荷するなど主要OSの一つとなった。PostgrSQLとMySQLというオープンソースDBMSは新版で基幹システムに必要な機能や性能を装備,業務アプリケーションでも多数のオープンソース・ソフトウエアがリリースされた。Windows上でもオープンソース・ソフトウエアの利用が“当たり前”になった。WebブラウザFirefoxとオフィス・ソフトOpenOfiice.orgは,Internet ExplorerとMicrosoft Officeの最大のライバルとなり,企業での利用も進んでいる。
開発モデルとしてのオープンソースは間違いなくIT産業のメインストリームとなった。米Sun MicrosystemsはSolarisをオープンソース化し,コミュニティの開発リソースの取り込みを狙う。米Red Hatと米NovellがFedora FoundationとOpenSUSEプロジェクトを作った狙いも同じだ。
セキュアOSや仮想マシンといった先端技術は,オープンソース・ソフトウエアを中心に技術革新が進んでいる。ベンチャ・キャピタルの投資も拡大。課題とされた特許侵害の問題を解決するため,米IBMが中心となり「パテント・コモンズ」を形成する動きも進んでいる。
一方デスクトップOSとしてのLinuxは,挑戦が始まったばかりだ。経済産業省は2004年度の教育現場でのオープンソース・デスクトップ導入実験に続き,2005年度は自治体での導入実験を開始した。その柔軟性を生かし,シンクライアントとして活用する動きも拡大してきた。
◆基幹システムへのLinux採用が拡大
・「公共団体の60%がオープンソース導入,Linuxサーバーは30%成長」---矢野経済研究所(2月13日)・「Gooでは千数百台のLinuxサーバーを使用」---NTTグループのオープンソース利用状況(6月22日)
・IBM汎用機の2~3割がLinux搭載機に,選ばれる理由は意外な“割り引き”効果(7月1日)
・産総研とヤナセがWindowsからLinux+Sambaに乗り換えた理由(7月13日)
・2005年度は28%増で9万台超へ,大規模システムでWindows押さえ本命に(9月29日)
・「Linux導入が金融業などで増加,選択の基準はコストではない」---日経Linux事例研究セミナー(11月8日)
◆Linux携帯1000万台
・「2005年度は1000万台近いLinux搭載3G携帯を出荷する」――NTTドコモ 照沼和明氏(6月3日)・NokiaのLinux携帯端末は日本製オープンソース・メール・ソフト「Sylpheed」を搭載(6月3日)
・ACCESSが米パームソース買収へ,携帯アプリのソリューション強化ねらう(9月9日)
・モバイル通信およびLinux関連企業が携帯電話向けLinux推進団体「LiPS Forum」を結成(11月15日)
◆オープンソースDBMSが基幹システム領域へ,MySQL 5.0とPostgreSQL 8.0リリース
・【PostgreSQLウォッチ】第14回 ついに正式リリース!PostgreSQL 8.0を徹底解説(1月24日)・【PostgreSQLウォッチ】第22回 PostgreSQL 8.1正式リリース!(11月17日)
・米OracleがオープンソースDBエンジン「InnoDB」を買収,MySQLは「歓迎」(10月8日)
・ストアド・プロシジャなどを備えたオープンソースDB「MySQL 5.0」正式公開(10月25日)
・2年半ぶりの新版MySQL 5.0,新機能や移行ツールでOracleやMS SQL Serverの領域に踏み込む(10月25日)
・「『MySQL 5.0』のダウンロード数が3週間で100万件を突破」,スウェーデンのMySQL(11月15日)
・【MySQLウォッチ】第21回 ついに正式リリースされたMySQL 5.0と,PHPの新環境(10月29日)
・【MySQLウォッチ】第22回 MySQL 5.1の機能強化予定とOracleによるInnobase買収の影響(12月3日)
◆オープンソース業務アプリケーションが続々登場
・業務アプリにこそオープンソースを(8月18日)・国内初のオープンソースCRMとFAQ管理システム,ネットワーク応用通信研究所が無償公開(6月7日)
・オープンソースのグループウエア「Group-Office」,ワイズノットが有償サポート開始(9月14日)
・長崎県、電子県庁システムのソースコードを公開(10月21日)
・「市町村のシステム共同化を狙う」、8自治体が基幹業務パッケージを開発してオープンソース化(5月12日)
・ニユートーキヨーがWeb販売在庫管理システムをオープンソース・ソフトウエアとして公開(12月2日)
・「市のSNSを一人で開発,オープンソースとして公開」---熊本県 八代市 情報推進課 小林隆生氏
・総務省の地域SNSがスタート,オープンソースSNSをベースに(12月16日)
◆Firefoxが1億ダウンロード,企業での導入も
・「FirefoxとThunderbirdの企業への導入が始まった」――Mozilla Party JP 6.0より ・「Firefoxの市場シェアが10%を超え,Netscapeは衰退」,米調査より(4月27日)
・1周年を目前に,「Firefox」のダウンロード件数が1億件を突破(10月20日)
・1年ぶりの新版Mozilla Firefox 1.5正式リリース,日本語版も公開(11月30日)
・新Webブラウザ「Flock」はIEやFirefoxの脅威になる(10月31日)
・「1万人クラスの企業でFirefoxとThunderbirdの導入が進んでいる」---Mozilla Japan(12月16日)
◆OpenOffice.org 2.0リリース,MS Officeとの互換性向上
・Microsoft Office 5万円は高いか安いか(4月14日)・【結果発表】OpenOffice.orgとStarSuiteはMS Officeを代替できるか(5月9日)
・ソースネクストがプレゼン・ソフトを1980円で発売,「日本は世界一スタースイートが売れている」(9月13日)
・MS OfficeにそっくりのOpenOffice 2.0ベータ版が無償で登場(3月14日)
・OpenOffice.org 2.0ベータ2の日本語版リリース,約400ページの解説書もPDFで無償公開へ(8月31日)
・米マサチューセッツ州,MS Officeからオープン標準規格ベースへの移行計画を最終決定(9月26日)
・MS Officeとの互換性を向上させた「StarSuite8」エンタープライズ版とOEM版発売(10月13日)
・OpenOffice.org 2.0 日本語版正式リリース,MS Officeとの互換性向上とDBアプリ追加(10月28日)
・「累計ダウンロード数が5000万以上に」---OpenOffice.org コミュニティ・マネジャ Louis Suarez-Potts氏(11月1日)
・米MS,Office次期版でXPS/PDFをサポート,OpenDocumentは拒否(11月1日)
◆SunがSolarisをオープンソース化
・米Sunが「Solaris 10」をオープンソース化,関連特許1600件も無償提供(1月26日)・「Linuxの台頭がSolarisオープンソース化の動機」,サン纐纈氏(2月23日)
・米Sun,「Solaris 10」をオープンソースOS「OpenSolaris」として公開(6月15日)
・「SolarisをOpenSolarisの1ディストリビューションにする」---サンがオープンソース化の詳細を明らかに(2月24日)
・将来のSolarisは,オープンソース版Solarisのディストリビューションに(2月24日)
・オープンソースになったSolaris,Sunの狙いと成功への課題(6月24日)
・米Sun,Java ESとSun N1 Managementをオープンソース化(12月01日)
・オープンソースになったSolaris,Sunの狙いと成功への課題(6月24日)
・「Linuxの圧力でオープンソース化したわけではない」OpenSolaris担当マネージャ(6月22日)
・「OpenSolarisをPowerPCへ移植する提案も」---米Sunがソースコード公開の反響を報告(6月22日)
・「オープンソースがイノベーションを加速」,
Sunのオープンソース責任者大いに語る(11月17日)
◆ディストリビュータがコミュニティ・パワー取り込みに躍起,Red HatはFedra Foundation設立,SUSEもコミュニティ・ベースへ
・米Red HatからFedora Projectが独立へ,ソフト版クリエイティブ・コモンズを提唱(6月6日)・「Fedora Foundation設立の目的は,プロセスをもっとオープンにすること」――米Red Hat Michael Tiemann氏(7月5日)
・米NovellがopenSUSE projectを開始,米Red HatのFedoraに対抗(8月9日)
・【Linuxウォッチ】第20回 SUSE Linuxがコミュニティ開発へ移行,最新版がリアルタイムで無償公開に
・ノベルがLinux新版「SUSE Linux 10.0日本語版」,同一構成の無償版も即日公開へ(9月28日)
◆LinuxベースのセキュアOS開発進む
・オープンソースのセキュアOS「SELinux」のユーザー会が発足(2月7日)・独自開発のセキュアOS相当機能を付加したLinuxの新版,IPテレコムが無償公開(3月25日)
・「米政府機関でSELinuxのプロジェクトが進行中,複雑さを解決する技術も開発」---SELinux Symposium Chairman Frank Mayer氏(6月14日)
・政府が不正アクセス防止のために「セキュアOS」の導入を促進(7月1日)
・セキュアOS SELinuxの国産GUIツール「SELinux Policy Editor 1.0」正式版が無償公開(7月21日)
・NTTデータが独自開発オープンソース・セキュアOS「TOMOYO Linux」を公開,ポリシーの自動学習機能を備える(11月11日)
・【特選フリーソフト】自動学習型セキュアOS TOMOYO Linux---VMwareで実際に体験(11月25日)
◆仮想マシン・ソフト「Xen」に注目集まる
・Fedora Core 4正式リリース,仮想マシン・ソフト「Xen」を搭載(6月14日)・【Linuxウォッチ】第18回 サーバー集約やセキュリティ対策で期待を集める仮想マシン技術(6月24日)
・仮想化ソフト「Xen」,VT対応プロセサ上でLinuxとWindows XPが同時に稼動(8月26日)
・1台のマシンに複数のOSを稼働---オープンソース「Xen」に注目(9月6日)
・産総研が仮想マシン搭載KNOPPIX「Xenoppix」,Linuxの上でNetBSDやPlan9が稼働(10月4日)
・「次期版Red Hat Enterprise Linux 5の目玉は仮想化」---米Red Hat副社長(10月4日)
・「仮想化ソフトはオープンであるべきだ」、HPの主席研究員が禅寺で「Xen(ゼン)」を解説(10月28日)
◆オープンソース企業の投資が拡大
・元米Sun共同設立者のBill Joy氏,米SpikeSourceの取締役に(7月20日)・オープンソース・グリッド・ソフト「Globus」向けベンダーの米Univa,800万ドルの資金調達(8月23日)
・米国で注目あびるオープンソース・ベンチャー,大物が参加しVCも積極投資(7月29日)
◆発明者保護とイノベーション促進の最適なバランスは---パテント・コモンズの動きが広まる
・IBMが500件の特許をすべてのオープンソース・ソフトウエアに許諾(1月11日)・米Sunが「Solaris 10」をオープンソース化,関連特許1600件も無償提供(1月26日)
・「本当にオープン?」,米Sunの特許無償提供に民間団体が「不明瞭」と異義(1月26日)
・米IBMの特許公開の真意は何か――担当副社長を直撃(3月7日)
・Nokia,Linuxカーネルに同社が保有する全ての特許の利用を許可(5月26日)
・米下院議員が先願主義への移行などを規定した特許制度改革法案を提出(6月10日)
・欧州議会がソフトウエア特許指令を最終的に否決(7月7日)
・「オープンソースに開放された特許の共有財を形成」,OSDLがパテント・コモンズ・プロジェクトを開始(8月11日)
・米CAがオープンソース活動に特許14件を公開,米IBMとともに「パテント・コモンズ」を推進(9月8日)
・経産省が「特許がイノベーションを阻害する事例」を調査し公表,特許法の準則を整備へ(10月7日)
・「ソフトウエア特許はイノベーションを減退させやすい」---経産省研究会が中間報告を公表(10月11日)
・米IBMが医療と教育分野での相互運用性確保のために特許を開放(10月25日)
・Linux特許をロイヤルティ・フリーで提供する管理会社「OIN」が発足,米IBM/ソニーなどが支援(11月11日)
・オープンソース・コミュニティに開放された500以上の特許リスト,OSDLが公開(11月16日)
◆経産省がLinuxデスクトップ数百台を自治体へ
・自治体へLinuxデスクトップを導入,経済産業省が実用化検証へ(3月2日)・「Linuxの振興を支援する」――自民党政調会長 衆議院議員 与謝野馨氏(3月8日)
・【自治体Linux最前線】「OSSを活用した共同アウトソーシングでコストを低減し地元企業を育成する」---北海道庁IT推進室主幹 小林誠氏らが講演(6月12日)
・【自治体Linux最前線】「政府と自治体はオープンソース・ソフトウエアを積極的に利用すべき」――自民党政調会長 与謝野馨氏(6月12日)
・【自治体Linux最前線】「特定の製品に依存しない調達基準を策定,自治体へのLinux導入実験も実施」---経産省 小林利典氏(6月12日)
・デスクトップLinux,学校へ行く(3月2日)
・Linuxデスクトップ,学校へ行く――1CD Linux「KNOPPIX」編)(6月20日)
・「Linuxが学校に適していると70%が評価,岐阜大付属小は完全移行」,IPAがOSS導入実験の報告書公開(7月19日)
・経産省による教育現場へのLinuxデスクトップ導入が2年目に突入,シンクライアントを採用(9月20日)
・「中央省庁の63%がオープンソースを利用」,経済産業省などが調査(10月31日)
・「町役場丸ごと」も---経産省がLinuxデスクトップ数百台を札幌市,栃木県二宮町など4自治体へ導入へ(11月14日)
・「町は財政改革中,ITコストもあらゆる手段で下げる」---役場全体でLinuxへ移行する二宮町の挑戦(第1回)(12月9日)
・ドイツのミュンヘン市,1万4000台のLinux移行プロジェクトでDebian GNU/Linux採用を公表 (5月2日)
・なかなか進まぬミュンヘン市のLinuxへの移行(9月17日)
◆Linuxシンクライアントの導入相次ぐ
・大阪大学がディスクレスPC850台を導入,Vine Linuxをネットワーク起動(3月29日)・「WindowsからLinuxシン・クライアントへの移行で絶対のセキュリティを実現」――NTTコムウェア 竹川直秀氏(6月5日)
・経産省による教育現場へのLinuxデスクトップ導入が2年目に突入,シンクライアントを採用(9月20日)
・リクルートエイブリックがLinuxベースのモバイル・シンクライアント導入へ,徹底したセキュリティ確保を狙う(10月24日)
・NTTデータがWindows端末にもなるLinuxシンクライアント,「ネットワーク・ブートで常に最新版,ライセンス料も削減」(11月30日)
・NTTコムウェア,NTTグループ対象に500台規模でLinuxデスクトップとシンクライントの導入実証開始(12月1日)
