小林隆生氏
小林隆生氏
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 熊本県八代市の地域ポータルサイト「ごろっとやっちろ」。地方自治体のサイトとして初めてソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を開設したが,このサイトは同市の職員小林隆生氏が一人で構築したものだ。小林氏にごろっとやっちろに込めた思いを聞いた(聞き手はIT Pro編集 高橋信頼)。

---なぜ,自治体でSNSを提供しようと思ったのですか。

 SNSを使ってみて,こういった人と人とのつながりは,近くで暮らし実際に触れ合える,地域でこそ生きると思ったからです。

 また,地域ポータルサイトであるごろっとやっちろを,頻繁に使われるサイトにしたいというのも動機でした。災害情報などを流す基盤として考えており,そのためには常に利用されるサイトである必要がありました。

 SNSを導入したことで,アクセスは向上しました。2005年8月の登録メンバー数は1300名以上になり,その約85%は八代市民です。子育てやグルメなどのコミュニティがあり,オフ会が開催されたり,同窓会の打ち合わせがごろっとやっちろの中で行われたりしています。

---お一人ですべて開発されたそうですね。

 SNSは5時から残業して作りました。かけた時間は,3カ月,1日平均4時間くらいでしょうか。サーバーは既存のもの,OSはFreeBSD,Webアプリケーション開発言語はPHP,DBMSはPostgreSQLなどオープンソース・ソフトウエアを使いましたので,私の残業代だけでできました。

 苦労したことは,とよく聞かれるのですが,すんなり出来てしまいましたね(笑)。勉強しながら作りましたが,もともと,プログラミングは好きでずっとやっていたので,ストレスは感じませんでした。

 ゲーム・ソフトを作って,インターネット上に公開もしていました。ゲームには,SoftEtherを開発した登大遊くんが遊びに来たりしていました。ゲームのほかにも,「集合名人」という,LANでチャットやファイル交換ができるソフトを公開しています。97年ごろ,まだ八代市役所にLANが導入されたばかりの時期に開発したもので,市役所では1000人近く,ほとんどの職員が使っています。

 GISエンジンも開発しています。建築関係などの業務でGISが必要になったのですが,購入すると数億円という見積もりだったので。これは3回作り直しました。最初はDelphiで,次はLinux上にC言語で。広域を表示すると遅くなるという問題があったので,サーバー側をCとPostgreSQLで,クライアント側をFlashで作りました。ごろっとやっちろでもこのGISエンジンを使っています。

---SNSのソースコードをオープンソースとして公開されました。

 「open-gorotto」というサイトで公開しています。open-gorottoを使ったSNは,互いに“つながる”ことができるよう開発を行っているところです。他のSNSに登録されているユーザーを友人として登録したり,登録していなくても,そのSNSに友人がいれば,ゲストとしてログインしたりすることができます。神奈川県の川崎市でopen-gorottoを使ったSNSの構築が始まっています。

 こうやって地域のSNSが連携すれば,例えば地方にいるおじいちゃんと,都会にいる孫がつながったりすることができる。楽しいですよね。人と人とがつながることで,マイナーな地域にあるSNSの存在意義も高まるはずです。