米Novellは2005年8月,「Novell SUSE Linux Professional」の開発をコミュニティ・ベースの「openSUSE project」に移行した。これまで社内で行っていた開発に,誰でも参加できるようにする。また従来SUSE Linux無償版は,製品発売後一定期間が経過してからインターネットで公開していたが,今後は開発段階から入手できるようになる。
openSUSE projectによってLinuxの選択肢はどう変わるのだろうか。そしてNovellがopenSUSE projectを設立した狙いは何だろうか。
SUSE Linux 10.0 OSS Beta 4を使ってみる
まずは,openSUSE project発足と同時に公開された「SUSE Linux 10.0 OSS Beta 4(以後SL10.0)」を実際に使ってみよう。プロジェクトのサイトからISOイメージをダウンロードして,PCエミュレーション・ソフトのVMware5上にインストールしてみる。
ISOイメージは5枚組となっている。4枚目,5枚目はデフォルトのインストールでは少ししか使われないのだが,必要なので,すべてダウンロードしなくてはならない(SUSEは昔から容量が多く,DVD-ROM版もかなり早い時期から提供していた)。いくつかのミラー・サイトが用意されているので,近くのFTPサイトからダウンロードしよう。今回はi386用を試したが,x86-64用,PowerPC用も用意されている。
インストール自体はスムーズに進んだ。CDの1枚目が終わったところで一度再起動が行われるのが,Fedoraなどと異なるところだろうか。インストールが終わるとセットアップに移行し,アカウントやハードウエアの設定などを行う。デスクトップ環境はKDEとGNOMEから選択できるが,SUSEならばKDEだろう。
この設定段階で作成したアカウントで自動ログインするように設定される。Windows XPやMac OS Xも同様に設定されるので,一般ユーザー向けのOSとしてはそれほど珍しい動作ではないが,これまでのLinuxでは比較的珍しい。openSUSE projectが開発するディストリビューションの方向性はデスクトップ向けとなっているので,その方向性の一つの現れだろう。
SL10.0のソフトウエア構成だが,Linuxカーネルは現時点で最新の2.6.13,KDEは3.4.2となっている。そのほかにNovellが所有しているXimianのEvolution 2.3.8(メール&グループウエア・クライアント)や.NET互換の開発環境Monoも含まれている。また,オフィススイートのOpenOffice.orgは2.0直前の1.9.125,WebブラウザのFirefoxやThunderbird,仮想マシン環境のXENも含まれており,必要なものは一通り揃っている。
日本語の入力には多言語入力フレームワークであるSCIMが採用されており,シフト+スペースを押すことですぐに入力できた。日本語フォントにはさざなみ明朝・ゴシックが採用されている。
一通り触ってみた感想としては,全体的によくまとまっているというものだ。ただし以前のSUSE Linux 9にくらべてそれほど大きく変わったという印象は受けなかった。コンポーネント全体を最新バージョンに入れ替えた再構成版,という位置づけで捉えて問題ないだろう。単純にプロダクトとして見た時には,SL10.0はむしろSUSE Linux 9.4とでも言うべきで,開発スタイルの変更に合わせてバージョンを新たにしたというところだろう。
1週間に1回のハイペースでリリース
SUSE Linuxのロードマップだが,2005年8月9日にopenSUSE projectが発表されると共に,最初のベータ版「SUSE Linux 10.0 OSS Beta 1」がリリースされた。9月1日にはBeta 4がリリースされており,さらに今後9月9日にRC1(リリース候補版)がリリースされて最終的なリリースへの開発が進むことになる。その後,9月28日には早くもSUSE Linux 10.1 アルファ版のスナップショットがリリースされて,次期バージョンの開発へ進むとしている。
表1●現時点で公開されているロードマップ
8月9日 | SUSE Linux 10.0 Beta 1 リリース |
8月18日 | SUSE Linux 10.0 Beta 2 リリース |
8月25日 | SUSE Linux 10.0 Beta 3 リリース |
9月1日 | SUSE Linux 10.0 Beta 4 リリース |
9月9日 | SUSE Linux 10.0 RC1 リリース(予定) |
9月28日 | SUSE Linux 10.1 アルファ版 |
1カ月間で4回,およそ1週間に1回のリリースアップが続くというハイペースである。次々と新しいバージョンを公開する「Early Release」が特徴のオープンソース的な開発と言えるかもしれない。
それにしても,コミュニティ開発への移行は,一見「オープンソースのビジネス化」という流れに逆行するようにも見える。なぜopenSUSE projectなのだろうか。