MySQL 5.0の正式リリースから1カ月が経過した。この間に機能追加およびバグフィックスが行われたバージョンがリリースされている。今回は,MySQL 5.0の現状と5.1の予定に関してレポートする。
60件のバグを修正したMySQL 5.0.16リリース
本稿を執筆している時点では,MySQL 5.0.16(10 November 2005)が公開されている。MySQL 5.0.16には,機能追加8項目とバグフィックス60項目が含まれている(Change Log)。
現時点でMySQL 5.0サーバーに関するバグは,221件(未確認も含む)報告されている。MySQLではSearch the Bug Systemによって,レポートされているバグを検索することができる(写真1)。
例えば,MySQL 5.0サーバーに関するバグを検索すると数秒で写真2のような一覧を表示する。このように誰でもバグの状況を把握できる。もちろんバグの報告もできる。バグ報告もMySQLの開発に対する大きな貢献となる。
MySQL 5.1ではアウタージョインや制約,パーティショニングを搭載へ
MySQL 5.0が出たばかりで気が早いのだが,既にMySQL ABは,MySQL 5.1を開発している。またMySQL 5.1のリファレンスマニュアルまで公開している。ただしMySQL 5.1自体は現在はAlpha版であり,まだ一般には公開されていない。
このMySQL 5.1 Reference Manualとロードマップから,これまでの機能追加と実装予定を表1にまとめた。
表1●これまでの機能追加とMySQL 5.1での実装予定
機能 | MySQL バージョン |
---|---|
外部キー | 3.23(標準搭載は4.0) |
UNION | 4.0 |
サブクエリ | 4.1 |
R-ツリー | 4.1 |
ストアド・プロシジャ | 5 |
ビュー | 5.0(更新可能は5.1) |
カーソル | 5 |
XAトランザクション | 5 |
トリガー | 5.0 and 5.1 |
アウタージョイン | 5.1 |
制約 | 5.1 |
パーティショニング | 5.1 |
プラガブル・ストアド・エンジンAPI | 5.1 |
行ベースのレプリケーション | 5.1 |
MySQL 5.0で多くの機能が追加されたが,MySQL 5.1でもアウタージョインやパーティショニングなど多くの機能が追加される予定だ。既にMySQL 5.0に実装されている外部キーやトリガーなども改良される。また,制約(Constraints)のようにMySQL 5.0では実装が間に合わなかった機能もMySQL 5.1に搭載される。
余談だがmysql.comのドキュメントは,バージョン別に整理され,使用しているバージョンに合わせてマニュアルを選択できるようになった(写真3)。
InnoDBが使えなくなる可能性はあるか
10月にInnoDBの開発元であるInnobaseを米Oracleが買収するというニュースが流れた(関連記事)。
MySQLは複数のストレージ・エンジンを使用できるアーキテクチャになっているが,その中でもInnobaseは,MySQLでトランザクション機能やオンライン・バックアップ機能を使用する際に標準的に使われるストレージ・エンジンである。そのためこの件に関しては様々な情報が流れ,不安を感じているユーザーもいるようだ。
MySQL社とInnobase社との間のInnoDBに関する契約は,来年までとされている。そのため,来年の段階で,MySQL社とInnobase社(Oracle社)の間で,契約更新に関する交渉が行われる。交渉の行方を占うことは難しいが,InnoDBが使用できなくなることはないと考えられる。現行のバージョンでは,GPLによるソース公開となっているからだ。
ただしもしかすると,新しいInnoDBのライセンスが変更され,使用できなくなるという可能性は残る。いずれにせよ契約更新までまだ時間がある。場合によっては代替のストレージ・エンジンを用意する可能性もあるかもしれない。今後何か展開があれば,適宜解説していきたい。
■著者紹介 佐藤栄一(さとうえいいち)
ゼンド・ジャパン株式会社 アーキテクト MySQL担当。PHPのコア技術者が設立したイスラエルZend Technologiesと提携関係にあり,Zend製品の販売,サポートおよびLAMPおよびLAPPによるシステム構築を推進しているMySQL ABのリセーラとしてライセンス,サポート,コンサルティングの提供を行っている。