柴垣斉氏
 「検索エンジンGooでは千数百台のLinuxサーバーを使用している。eラーニングのシステムはオープンソースとして公開した」――NTT 第3部門(R&D戦略部門)オープンソースソフトウェアチーフプロデューサ 柴垣斉氏は6月22日,イベント「VA Linux Business Forum 2005」でNTTグループでのオープンソースへの取り組みについて講演した。

 NTTグループでは,グループ会社がオープンソース・ソフトウエアを利用する際のサポートを行う「OSSサポートセンター」をバーチャルな組織として持つ。またNTT研究所にはオープンソースに関する研究開発を行う「OSSラボラトリ」がある。柴垣氏はこれらを束ねるプロデューサである。

 柴垣氏は,NTTグループでのオープンソース利用例のいくつかを紹介した。グループのインターネット・サービス・プロバイダ(編注:ぷららネットワークスと見られる。関連記事)では,Linuxを利用し1日150万通のメールを処理している。またDNSサーバーは1日3億5000万件の問い合わせを処理している。TCOを30%から50%削減できたという。

 また検索エンジンのGooでは,千数百台のLinuxサーバーを使用している。他のOSを搭載したサーバーもあるが,8割はLinuxという。

 Gooの新鮮情報検索システム「Goo最速ニュース」でもLinuxを利用している。短時間のうちにインターネットから大量の情報を収集し,インデックスに反映するために,Linuxカーネルのチューニングを行った。「ソースコードが公開されているからこそ可能だった」(柴垣氏)。チューニングはVAリナックスと協力して行った。

 NTTレゾナントの携帯楽曲判定システム「あて!?メロ」も数百台のLinuxサーバーで稼動している。携帯電話に音楽を聞かせると,曲名,歌手名を判定しメールやWebで回答する有料サービスだ。専用の「デバイス・ドライバが必要なCTIサーバー以外はLinuxを採用した」(柴垣氏)。探索サーバーだけで数十台ある。ミドルウエアもJBoss,Tomcatとオープンソースを使用している。クラスタリング構成により,365日24時間運転が可能という。

 自治体向けパッケージもオープンソースを採用している。電子申請システムおよび電子入札システムは,LinuxとTomcatを使用している。

 開発したシステムをオープンソースとして公開したケースもある。国際規格に準拠したeラーニング・システム「SCORM2004学習エンジン」である。日本イーラーニングコンソーシアムと共同で,コミュニティを立ち上げている。「すでに関東のいくつかの大学で使われている」(柴垣氏)

 通信ノードでのLinux利用については「現時点では検討中としか言えない」(柴垣氏)。「情報システムと通信システムでは,壁は低くなってきたとはいえ,まだ要求条件に違いがある」(同)。例えば,通信システムでは通信を中断することなくソフトウエアにパッチを当てる機能などが求められる。柴垣氏は「流れはいずれそちらに進むだろう」と,将来的には通信ノードにもLinuxが搭載されていくとの見方を示した。

(高橋 信頼=IT Pro)