ドイツのミュンヘン市は,同市のパソコン約1万4000台をLinuxに移行するプロジェクトにDebian GNU/Linuxを選定したことを移行プロジェクト「LiMux」のホームページ公表した。

 Debian/GNU Linuxは,すべてボランティア・ベースで開発が行なわれているLinuxディストリビューション。Linuxの中核部分であるカーネルや,WebサーバーのApacheなど主要なアプリケーションはコミュニティが開発しているが,それらを統合してOSとしてパッケージ化したものがディストリビューションである。主要なディストリビューションの多くは米Red Hatや米Novellなどの企業が開発,配布および販売している。これに対し,Debian/GNU Linuxはボランティア・ベースのコミュニティであるDebian Projectが開発している。

 プロジェクトの業務を受注したのはSoftconとGonicusの2社。選定は技術および価格の観点から行なわれたという。ミュンヘン市のディレクタ兼コンダクタのWilliam Hoegner氏は,「提案のクオリティと広範なコミットメント」を企業選定の理由として挙げている。

 ミュンヘン市によれば,Debian/GNU Linuxを採用するのは同市だけではなく,ドイツ政府の情報セキュリティ確保を任務とする組織BSI(Bundesamt fuer Sicherheit in der Informationstechnik)や,オーストリアのウィーン市などもDebian/GNU Linuxを採用するという。

 ミュンヘン市のプロジェクト・リーダーPeter Hofmann氏は「可能であれば本年末から実際の移行を開始する」としている。

 同市のLinux移行計画は2003年から進められており,2004年6月に同市市議会で正式に承認された。2004年8月,ソフトウエア特許に関する懸念から移行計画を一時凍結していたが,「オープンソース・ソフトウエアの特許リスクはクローズドなソフトウエアと比較して大きくないと判断し」(ミュンヘン市),2004年9月にプロジェクトを再開していた。また米Novell SUSE Linux BU CTO Juergen Geck氏によれば,このプロジェクトにはNovellも参加している(関連記事)。

(高橋 信頼=IT Pro)