「Solarisのオープンソース化を提案したのはScott McNealy会長。約1年前から準備を始めた」――サン・マイクロシステムズ プロダクトマーケティング本部長 纐纈昌嗣氏は2月23日,同社のUNIX OS Solarisについての記者向け説明会で,Solarisオープンソース化の経緯や詳細を明らかにした。

 米Sun Microsystemsは1月25日,同社のOS「Solaris10」をオープンソース化し,「OpenSolaris」として無償公開すると発表した(関連記事)。すでにバイナリは2月1日からダウンロードを開始した。「2週間あまりで約54万件のダウンロードがあった」(取締役フィールドマーケティング統括本部長 杉本博史氏)という。

 ソースコードもビルド可能な形で2005年第2四半期に公開する。ソースコード公開までに時間を要するのは「他社や他団体の知的所有権に抵触する部分を削除したり書き換えた上できちんと動作するようにするため」(纐纈氏)という。OSだけでなくテスト・ツールなども公開していく。

 「Linuxがこれだけ発展している以上,その潮流“オープンソース・エコシステム”は無視できない。それがSolarisオープンソース化の動機になった」と纐纈氏は言う。Linuxのようにコミュニティを育て,その力を借りてSolarisの機能や品質を向上させ,普及を図ることがオープンソース化の目的だ。「Sunには設立当初からコミュニティが存在した。昨日今日始めたわけではない」(杉本氏)。将来的にサンの販売するSolarisは,OpenSolarisのソースコードをベースにした“ディストリビューション”となる。

 OpenSolarisはCommon Development and Distribution License(CDDL)と呼ぶライセンスで公開する。Linuxなどが採用しているオープンソースの標準的なライセンスGeneral Public License(GPL)を採用しなかった理由として,サンは「GPLは改変した部分を全て開示しなければならず,ビジネスでは開示が難しい場合もある。CDDLでは必ずしも改変部分を公開しなくともよい」(纐纈氏)と説明した。またコードに貢献する際は特許権の行使を放棄するという条項により,特許紛争への対策を織り込んでいる。

 またOpenSolarisの提供にあたって,同社は関連特許1600件以上を無償提供すると発表したが,対象はCDDLに基づくソフトウエアとしている。すなわち現時点ではSunが公開するオープンソース・ソフトウエアに限られている。これにに対し米IBMは,500件の特許を,OSIの定義を満たすオープンソース・ソフトウエアすべてに無償提供すると発表している(関連記事)。この点についてサンは「Solarisはサンにとって真の中核技術であり,その特許1600件を提供した。IBMが開放した500件の特許はIBMの中核技術ではなく,特許の数と重みが全く異なる」(纐纈氏)とコメントした。CDDLを遵守している限りにおいては,Solarisの一部を切り出して組み込み機器に使用する,といった利用も可能になっている。

 SunはJava Desktop Systemなどの形でLinuxを販売しているが,Linuxの位置付けについては「Linuxは必要に応じて,顧客の要望に応じて調達して販売する,例えて言えばメモリーのようなもの。Sunの技術ではなく,中核ではない。Solarisがベスト」とする。デスクトップでもSolarisを推す。この日のプレゼンテーションも,松下電器のLet's Noteに搭載したSolaris10で行った。

 Solarisを無償提供することによる減収については「もともとOSのライセンス収入は大きくない。売り上げへの影響はほとんどない」と述べた。

(高橋 信頼=IT Pro)