受信者に承諾を得ることなく大量に送られてくるスパム・メール(迷惑メール)。国内でも被害を被っているユーザーは少なくないはずだ。“本場”米国では多くのユーザーを苦しめている。業を煮やしたオンライン・サービス事業者はスパム業者を相次いで提訴。スパム対策技術の開発も進めている。加えて,スパム規制法が成立し,法規制も始まっている。国内でもスパム対策製品が複数市場に出ており,導入するユーザーは増えている。

 IT Proでは,スパムに関する記事を鋭意報じてきた。そこで本稿では,過去に掲載したスパム関連記事をまとめてみた。スパムの現状を知って対策を施すために役立ててほしい。

増える一方のスパム,ヘルスケア製品の宣伝が多い

 米国のスパムに関する状況は,海外で発表されたニュース・リリースを紹介する「USニュースフラッシュ」などで報じてきた。ニュース・リリースの多くはスパム対策業者やスパム対策製品ベンダーなどから出されているので,うのみにすることはできないのが,被害が大きいことは確かだろう。

「2002年にスパムは150%増加した」,米Postiniがスパムに関するデータを発表
「電子メール・メッセージのスパムの割合は2003年に全体の45%,2007年には70%を越える」,米Radicati Group
「1日に遮断しているスパム数は7億8000万通」,AOLがメンバーに対スパムの努力と戦略を発表
「メンバーの通報により,毎日10億通のスパム・メール遮断に成功」と米AOL
「米国ユーザーの約半数は週40分以上をスパム・メール削除に費やす」,米調査
「スパムにより米国企業が被る損害額は従業員1人当たり874ドル」,米企業の調査
「虚偽の件名を付けたスパム・メールが今年前半で50%以上増加」,米企業の調査
「7月は電子メールの50%以上がスパムだった」,米Brightmailの調査
「増加の一途をたどるスパム・メール,消費者も着実に対策を実践」,米DoubleClickの調査
「スパム増加に困惑する小規模企業の42%が電子メールの利用中止を検討中」,米 Symantecの調査
「電子メール・ユーザーは付随タスクに週1時間を費やしている」,米調査

 ベンダーなどの調査によると,スパムの内容としてはヘルスケア関連製品(薬品,健康食品など)――特に,バイアグラ――の宣伝が多いようだ(写真)。

「7月のスパム・メールはヘルスケアとギャンブル関連が増加,ポルノ関連は減少」,英企業の調査
「2003年におけるスパム・メールのワースト1はバイアグラのオンライン販売」,米AOLの調査
「2003年12月のスパムはヘルスケア関連が41%,ただし融資や直販関連が増加」,英調査
「2004年1月のスパム,バイアグラやダイエット錠剤などの健康関連が42.5%」,英調査

米国ではスパム規制法が成立,しかし「効果なし」の声

 増える一方のスパムに対して,法律で取り締まるべきという声が米国では高まった。
「米国の職場ネット・ユーザーの約9割はスパム・メールの法規制を望んでいる」と,英企業
米ハイテク産業界,議会にアンチスパム法の早期制定を要請
「米国では過去1年間にスパム・メールが76%増加,法規制を求める声が強い」,米社の調査

 そして,2003年10月,米国議会がスパム・メールを禁止する「Controlling the Assault of Non-Solicited Pornography and Marketing(CAN-SPAM)」法案を最終的に承認。12月にはブッシュ米大統領が署名し,2004年1月から施行された。

 同法の成立に対して,プロバイダ各社は称賛のコメントを寄せた。

米MSと米Brightmail,米上院のスパム・メール禁止法案可決に称賛のコメント
米国議会がスパム対策法案を最終承認,米AOLなどがコメントを発表
ブッシュ米大統領がスパム対策法案に署名,業界各社がコメント

 とはいえ,施行前から同法を疑問視する声は多かった。

なんと罰金100万ドル!スパム禁止法は迷惑メールを減らせるか
「スパム禁止法案を懸念する承諾済み電子メール広告マーケッタは8%のみ」,米調査会社

 同法に基づいて訴訟が提起され始めたものの,

初のCAN-SPAM法違反訴訟,ISPの米Hypertouchが住宅リフォーム・サイトを提訴
米AOL,米EarthLink,米Microsoft,米Yahoo!が共同で6件のCAN-SPAM法違反訴訟

 今のところ,大きな効果はないようだ。

「スパム対策法の効果はいまいち,1月のスパム・メールは12月とほぼ同様」,米調査
「1月施行のスパム対策法あまり効果なし」,米調査
「2004年3月のウイルス/スパム被害状況,スパム対策法の効果なし」,米調査

対策講じるプロバイダ,足並みは揃わず

 オンライン・サービスを提供する米大手企業は,スパムの被害に苦しみ,CAN-SPAM法が施行される前から,スパム業者を相手取って訴訟を提起している。

米Microsoft,アンチスパム・キャンペーンを拡大。米英で15件を提訴
米Microsoft,ニューヨーク州司法局と協力しスパム業者を提訴
米AOLのスパム送信者に対する提訴,バージニア州地裁が管轄外を理由に棄却
米AOL,会員に3500万通を超えるスパムを送信した企業と個人をフロリダ州で提訴

 また,スパム撲滅に向けて協力することを,2003年4月に明らかにした。

スパム撲滅に向けて,米AOL,米 Microsoft,米Yahoo!が協力

 加えて,各社――特にMicrosoft――は,スパム対策技術や仕様を開発し,次々と発表した。

MSNで新たなスパム・メール遮断機能
MicrosoftのGates会長がスパム対策強化を表明
米Yahoo!がスパム対策ツールを強化,使い捨ての転送用アドレスなどを提供
米Microsoft,スパム・メール防止技術「SmartScreen Technology」を発表
MSがCOMDEXで披露した3つの新技術
Hotmailで収集したスパム情報をExchange/Outlookに反映---MSの新スパム対策
米Microsoft,「Windows XP SP2」のセキュリティ機能やExchangeのSMTPリレー機能を紹介
Gates氏,電子メールの身元追跡仕様「Caller ID for E-Mail」など,スパム撲滅に向けた新構想を発表
米Yahoo! ,電子メールの暗号認証システム「DomainKeys」で米sendmailと提携
スパム対策用のサーバー認証機能を実装したSendmailが2004年夏に公開

 しかし,各社の発表を見ると,それぞれ独自の技術を担ぐようだ。

米国で本格的に始まるスパム対策,しかし大手3社の足並みそろわず

 現時点では,どの技術が一般的に使われるようになるのか,いつごろ実用可能になるのかは全くの未定である。現状では,既存の技術や製品で対策を施すしかない。スパム対策製品は国内でも複数販売されている。

米国発のスパム・メール対策が日本に続々と上陸
注目●スパム対策に乗り出したメール・サーバー
スパム防止ツール
スパム・メール対策製品が続々、短期集中配信型に対抗する製品も

 フリーのスパム対策ソフトもある。

【特選フリーソフト】SpamProbe