スパム(迷惑メール)対策機能を持つソフト製品が続々登場している。 比較的スパムの少ない国内で市場が立ち上がるのはまだこれからだが、 メールセキュリティを実現するソリューションの商材として 品揃えしておくことが不可欠になりそうだ。

 「昨年末から、スパム対策に関する問い合わせが急増している。今年は当社が提供するメールフィルタリング製品の販売は、案件数ベースで、スパム対策が情報漏えいの用途を逆転するだろう」。クリアスウィフトの宮本哲也シニアマーケティングマネージャーは、スパム防止ツール市場の立ち上がりに期待感を示す。

 スパム防止ツールの市場で先行するのは、世界のスパムの約6割の発信元ともいわれ、同時に最大の受信国でもある米国だ。インターネットで送受信されるメールのうちスパムメールが少なくとも50 %を占めているという調査結果もあり、スパムの対策が進んでいる。米IDCは、スパム対策を含む世界のメッセージングセキュリティの市場は、米国を中心に2002年の2億3600万ドルから2007年には11億ドルへ急速に拡大すると予測している。

 だが国内では、今のところ企業のスパムの被害はそれほど切迫した問題にはなっていない。シマンテックが今年1月にインターネットユーザー1200人を対象に実施した調査によると、約70%が自宅宛てに1日に1通以上のスパムメールを受け取っているのに対し、会社のメールアドレス宛てに1日1通以上スパムメールを受け取っているという回答は約25%に過ぎなかった。

 そのため、日本ではこれまでは企業のスパム防止ツールの導入はあまり進んでいなかった。「ウイルス対策と同等のコストを負担してまで対策してくれるかは現時点では疑問」(アイマトリックスの小島美津夫社長)という声も少なくない。冒頭のクリアスウィフトにしても、MAILsweeper for SMTPの売り上げの現状は、大半が情報漏えい対策などの用途で、スパム対策の観点からの導入はまだ1割に満たない。

ユーザー企業が検討を始める

 それでもベンダー各社の認識は、ユーザーの関心は高まってきているということで一致する。米国の惨状を目の当たりにし、自らもスパムの被害が大きくなってきたユーザー企業が、対策を検討し始めているからだ。

 現時点で国内企業のスパムメールの影響は、ユーザーによって大きなばらつきがある。そのため「こちらから広範囲のユーザーに売り込むよりも、スパムの影響に困っているユーザーからの引き合いに応じて販売するケースが多い」(米センドメールのアジア・パシフィック担当副社長で日本法人社長の小島國照氏)。

 先行需要が最も大きいのがISP(インターネット・サービス・プロバイダ)。大量のスパムを一手に処理するISPにとっては、ストレージ容量やネットワークの帯域などへの影響は大きいからだ。昨年12月にMailstream Anti-spam Solutionを発売したセンドメールは、初年度の売り上げの6割程度をISP向けと見込んでいる。

 また、「大学や自治体を中心に導入が進んでいる」(スリーアールソフトの中村真人社長)ほか、「企業の研究所やマーケティング会社、コンサルティング会社など、特定の業種から引き合いが多い」(センドメールの小島社長)という。

 こうした先行ユーザーの動向を受けて、スパム防止ツールを無視できない商材と考えるソリューションプロバイダは増えている。日本ネットワークアソシエイツが昨年7月に販売パートナーを対象に実施した調査で、スパム防止ツールの市場が「ある」「できつつある」と答えたパートナーがそれぞれ、約10%、約40%だったのに対し、今年に入ってからの同じ調査では「ある」が約30%、「できつつある」が約50%と、急速に意識が変わってきている。

(森重 和春)