米Microsoftは,スパム撲滅に向けた新たな取り組みについて米国時間2月24日に明らかにした。Microsoft社会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトのBill Gates氏がサンフランシスコで開催中の「RSA Conference 2004」で基調講演を行い,同社の構想「Coordinated Spam Reduction Initiative(CSRI)」と,電子メールに関する新たな技術仕様「Caller ID for E-Mail」について説明したもの。

 Gates氏は,「当社に寄せられるクレームの中で最も多いのがスパムだ。Caller ID for E-MailとCSRIによって,スパム業者の存続を可能にしている経済モデルを覆したい」と述べた。

 CSRIは,業界全体を視野に入れた長期的な構想で,次の3つを主要な柱とする。

1.電子メールの送信元を認証できるCaller ID for E-Mail仕様の策定

2.商用電子メールを大量に送信する大企業を対象とした,電子メール送信に関するポリシーの確立

3.商用電子メールを限定的に送信する小企業が,スパム業者でないことを証明できるシステムの確立

 スパムを効率的に取り締まるには,フィルタリングの際により詳しい情報が必要だという。同社は,この新たな情報を電子メールに付加するために,電子メール・インフラ全体に若干の変更を加えることを提案している。

 既存のスパム・フィルタは,電子メールの発信元情報をみて,スパム・メールかどうかを判断しているが,スプーフィング(なりすまし)によってフィルタをくぐり抜けるスパム業者が多いのが現状である。

 そこでMicrosoft社は,電話のコーラーIDに類似した技術の導入を提案している。電子メールの送信者は,Caller ID for E-Mail仕様に基づいて,電子メールを送信するサーバーのIPアドレスをDNSに公開する。そして受信する側のシステムは,各メールを送信したサーバーのIPアドレスをDNSに照会し,そのIPアドレスが実際に存在するかを確認するという仕組みである。

 Microsoft社は,Caller ID for E-Mailを同社のメール・サービス「Hotmail」で試験的に実装する。送信するメールのIPアドレスを同日より公開し,受信するメールのチェックは今夏より開始する予定である。

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