現在開催中のCOMDEX 2003では,米Microsoft会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトのビル・ゲイツ氏の基調講演や展示ブースにおいて,Microsoftは今後提供する予定の興味深い技術を発表している。注目すべき3つの技術を紹介しよう。

アンチスパム技術「SmartScreen」
 ゲイツ氏は日曜日の基調講演で,スパム(ジャンク・メール)を防止する技術「SmartScreen antispam technologies」を発表した。これはExchange Server 2003をソフトウエア・アシュアランスの契約で購入したユーザーにのみ提供されるアドオン機能だ。このアドオンは「Microsoft Exchange Intelligent Message Filter」という名称で,2004年初めに提供される予定だ。

 この技術の初期バージョンは,MSN 8,MSN Hotmail,Office Outlook 2003に搭載されている。SmartScreenはMicrosoft Researchが開発し,MSが特許を有している。どうやら「Bayesian antispam technologies」と同様の機能を持つようだ。SmartScreenはジャンク・メールを特定するのに,発見型の電子メール分析技術(訳注:既知のジャンク・メールの傾向を元に,新規のジャンク・メールを割り出す方法)を採用している。またBayesian方式のアプローチと同様に,SmartScreenはユーザーが使えば使うほど,より賢くなる。

 興味深いことに,MicrosoftはSmartScreen技術をHotmaliで試た。Hotmailにやってくる数百万の実際のスパム・メッセージに対して,合意を得た数千の実際のHotmailユーザーがこの技術をテストした。Hotmailには非常に多くのスパムが寄せられることから,この実地試験はSmartScreen技術を十分鍛えることになった。

 SmartScreenの仕組みを説明しよう。電子メールがExchange Serverに届くと,まず受信者がチェックされ,このメッセージが受信者の「安全な送信者リスト」や「安全な受信者リスト」にあるのか,それとも「ブロック送信者リスト」にあるのかがチェックされる。リストに該当したメールが届くとルールを適用し,送信されたり,ブロックされたりする。リストにない送信者から送られたメールは,サーバーが電子メールの中身をチェックし,スパムか適正なメールかを判断する。これらの基準は管理者が設定可能だ。Exchangeは検査した電子メールを,受信者の通常のメールボックスと,ジャンク・メール・フォルダに振り分ける。

Windows XP Tablet PC Edition 2004
 Gates会長によれば,ここ1年間に売れたTablet PCは50万台に及ぶというが,これは正直いってあまり大きな数ではない。しかし来年は,2つの要因によって,Tablet PCはもうちょっと売れることになりそうだ。第1は,Tablet PCのCPUが,パフォーマンスに難のあるPentium IIIやPentium III-M,Crusoeから,より強力なPentium MやCentrinoに変わることである。既にこのような第2世代のTablet PCが販売されており,従来よりもかなりバッテリが持続するようになった。

 第2に,Microsoftは従来のTablet PCを改良し,新しく「Windows XP Tablet PC Edition 2004」を2004年上半期に出荷することだ。しかも既存のTablet PCユーザーは,無料でアップグレードできる。このTablet PC Edition 2004は,開発コード名が「lonestar」と呼ばれたもので,Tablet PCのデータ入力性能が大きく改善する。Gates会長は基調講演のデモで,Tablet PCの改良点の1つである「Info Panel」という,「デジタル・インク」を利用する際にテキスト・ボックスのようにポップアップする機能に関する改良点を披露した。

 前バージョンでは,入力された文字が何であるか(例えば「5」か「S」か)を,OSがいちいち判断していた。しかし,新バージョンのTablet PCでは,ソフトウエア開発者が入力可能な文字種をあらかじめ設定できる。例えば,電話番号を入力するソフトであれば,番号しか認識されないように設定可能なのだ。このほかMicrosoftは,ユーザーが同時にたくさんの文字を入力できるよう,Info Panelのサイズを変更している。

Windows Mobile 2003
 Gates会長はPocket PCについて多くを語らなかったし,Smartphoneについてほんの少ししか言及しなかったけれども,Windows Mobile製品群もちゃんとCOMDEXに展示されている。注目点は,Poket PCとパソコンとを同期させる「ActiveSync」というソフトウエアだ。従来,同機能はサード・パーティ製のソフトと比較して大きく劣っていた。

 Pocket PCや恐らくWindows Mobile Smartphoneの大きな問題として,頻繁にリブートが必要になることが挙げられる。リブートによって,アドレス帳やカレンダといったデータが消えることは稀だが,ユーザーの個人設定やカスタマイズしたセッティングなどは消えてしまうことが多い。それがHewlett-Packardなど,サード・パーティ製のPocket PCであれば,サード・パーティ製のソフトによってこの問題が解決されている。Microsoftには,この機能をActiveSyncにも持たせることが求められていた。

 他にもActiveSyncには,PCやその他のデバイスから情報を同期させる際に,最適な方法を選べないという欠点もあった。Palm OSであれば,PCのデータが常にPDAのデータを上書きするといった「ワンウエイ同期」を簡単に設定できる。しかし,このような基本的な機能がいまだにPocket PCやSmartphoneに備わっていなかった。2台のPCから1台のPDAに情報を同期させた際にも,本当はエントリを1つにしておきたいのに,エントリが2重に登録されるようなこともあった。

(Paul Thurrott)