「仮想化」「省電力」――。サーバー&ストレージ分野における2007年のニュース記事アクセス・ランキングをながめると,このような2つのトレンドが浮かび上がる。サーバーやストレージの「仮想化」に関連した記事は,ランキング上位に8本並んでいる。「省電力」がキーワードになっている記事も,タイトルからは読み取りづらいが6本ランクインしている。
にわかに注目され始めた仮想化技術
話題の仮想化技術は,乱立するサーバーの運用管理を容易にし,かつデータセンターの消費電力・発熱問題を解決する手段として関心が高い。サーバーの仮想化は文字通り,サーバーのハードウエアを「ハイパーバイザー」と呼ぶソフトウエアにより仮想化する技術である。仮想化したサーバー・システムを1台の物理サーバー上で複数実行したり,稼働を止めることなく別の物理サーバーに移動させたりできる。
パソコンやIAサーバーの仮想化技術は国内でも2000年ごろから利用され始めたが,ここ1,2年は企業の業務システムに広く利用され始めたことが目立つ。実際にランキングが示すとおり,マイクロソフトのサーバー仮想化ソフトVirtual Serverを大量導入したイオン・グループをはじめ,2300台のファイル・サーバーをストレージ仮想化技術で統合した第一生命保険など,大手ユーザー企業の構築事例を紹介した記事に関心が集まった。
2007年に,仮想化技術がにわかにクローズアップされ始めた理由はいろいろある。まず,Windows NTをサポートするサーバー・マシンがなくなり,NT上に構築したシステムを仮想化する必要に迫られていること。そして,複数のシステムを仮想化して,1台の物理サーバー上に統合するニーズが高まっていることなどである。仮想化技術を使った場合の性能や安定性に関して,これまでの利用実績から安心感が高まっている面もあるだろう。
もちろん,現時点で仮想化の対象は部門/店舗システムやインフラ系システムが中心である。まだミッション・クリティカルな基幹系システムへの適用例は少ない。
ただ,独SAPが同社アプリケーション製品を仮想環境上で本格サポートすることを明らかにしている。これを契機に,基幹系システムを仮想環境に移行させるための環境が,徐々に整備されていくと期待されている。