「Project Blackbox」の外観。一見すると普通のコンテナだ
「Project Blackbox」の外観。一見すると普通のコンテナだ
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コンテナの内部。中央の通路をはさんで左右にラックが配置されている
コンテナの内部。中央の通路をはさんで左右にラックが配置されている
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ラックを引き出したところ。すき間なくサーバーが置かれている
ラックを引き出したところ。すき間なくサーバーが置かれている
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コンテナ内の冷却の仕組み。ラックからラックへと空気を循環させる
コンテナ内の冷却の仕組み。ラックからラックへと空気を循環させる
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水を使った冷却装置。ラックとラックの間に置かれている
水を使った冷却装置。ラックとラックの間に置かれている
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外壁面には、ネットワーク用のポート(上)や水の供給口(下)が設けられている
外壁面には、ネットワーク用のポート(上)や水の供給口(下)が設けられている
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 サン・マイクロシステムズは2007年11月12日、輸送用コンテナ内に構築したデータセンター「Project Blackbox」を報道陣に公開した。車両や鉄道などを使って動かすことができる、いわば“動くデータセンター”だ。「2008年の早い時期」(同社の末次朝彦社長)に製品化する予定。

 Project Blackboxが利用しているのは、ISOが標準化した輸送コンテナ。車両、鉄道、船舶、航空機など豊富な輸送手段を使えるのが強みだ。例えば、災害の回避のために安全な場所に移したり、水力/風力発電が行われている地域に移してこうした電力を活用したり、といったことができる。加えて、データセンター用の建物の必要がないためコストや設置期間を削減できる、高密度にサーバーを配置することで設置スペースを抑える、必要なときに必要な分だけコンテナを柔軟に増やせる、などのメリットがある。

 コンテナの中には、中央の通路をはさんで左右に合計8つのラックを配置。制御装置用の1台は固定しているが、残りの7台は通路方向に引き出す。この中に、サーバーをぎっしりと収めている。

 ラックとラックの間には冷却装置を配置。隣のラックのサーバーからの排気をここで冷却し、次のラックへと回す仕組みだ。このため、ラック内のサーバーの向きは、通路に平行。一般には通路の方向にサーバーの前面を向けて置くが、Project Blackboxでは通路側を向いているのは側面で、前面は冷却装置の方向を向いている。こうすることで、冷却装置で冷やした空気をサーバーが前面から吸気できる。さらに、背面から排気した暖かい空気がそのまま次の冷却装置に渡される。コンテナの出入り口を閉めても、コンテナ内の空気を循環させるだけで冷却し続けられる。

 冷却には水を用いる。水冷にすることで冷却効率を高められるだけでなく、冷却コストも従来より40%低減できるとしている。コンテナの外壁面には、給電とネットワークの口のほか、水の採り入れ口も設けていた。

 1台のコンテナに収納できるのは、CPUにすると700個、コア数では2240個。ディスク容量では3ペタBにのぼる。一般的なデータセンターと比較して、約10分の1ほどの面積で設置可能だという。サーバーは同社製の製品だけでなく、他社製品も設置可能だ。

 価格は未定だが、Project Blackboxの本体(コンテナと配線、冷却装置など)で1億円程度になる見込み。米国では早期導入ユーザーが既に同製品を利用している。国内でも「既に10社以上引き合いがある」(同社 システムズ・ビジネス統括本部の馬場寿主管部長)。「ISPなどからの引き合いも多いが、こうした分野のビジネスを全く手がけていない企業からの関心も高い」(末次社長)。ビルの屋上や、油田の開発現場など多用な場面での活用のシナリオを考えているという。