第一生命情報システム オープン技術グループの雨宮崇氏
第一生命情報システム オープン技術グループの雨宮崇氏
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 「『仮想化ありき』ではなく,さまざまな課題を解決しようとしたら,仮想化に行き着いた」――。第一生命情報システム オープン技術グループの雨宮崇氏(写真)は,9月14日に開催された「仮想化最前線」セミナーで,第一生命保険のファイル・サーバー統合プロジェクトにおける取り組みを明かした。

 第一生命が,全国2000カ所の支社や支部にある2300台のファイル・サーバーの統合を開始したのは,2004年のことである。各拠点ごとにファイル・サーバーが散在していると,セキュリティ対策が難しい上,運用管理の手間もかかる。各サーバーに含まれるデータを有効活用する上でも統合を進め,集中管理することを決めた。最終的には28台のサーバーに集約。最低でも2.5Tバイトのディスク容量が必要だったが,将来のデータ増を考慮して5Tバイトのストレージを導入した。サーバー1台当たりのディスク容量は,150G~250Gバイトである。

 ただ,「サーバー統合に当たって3つの課題があった」と,雨宮氏は説明する。それは,(1)ストレージ装置に高い信頼性が必要になること,(2)統合してもユーザーがストレスなくファイルを操作できること,(3)バックアップが8時間以内で終了すること,である。(1)については,日立製作所製のハイエンドなストレージ装置を選定。(2)についてはネットワークを最適化した。

 (3)については,サーバーで動作するバックアップ・ソフトを使って,本番用ストレージのデータを別のストレージにバックアップする「ディスク・ツー・ディスク方式」を採用した。「テープ交換などで手間取ったりミスが生じたりするリスクを考慮すると,ディスク間のバックアップがよいと考えた」(雨宮氏)からである。

 しかし,実際に運用してみると,大きな問題が生じた。ユーザーによるデータ増加が予想以上に早く,サーバーに接続した250Gバイトのストレージにあるデータのバックアップが,8時間以内に終わらなくなってしまったのだ。「11~12時間かかることもあった」(雨宮氏)という。余裕をみていたつもりだったディスク容量も不足する恐れが生じ,追加の外部ストレージ装置が必要になってきた。ただ,単純にストレージ装置を増やすと管理が複雑になるという不安要素もあった。

 そこで第一生命が利用したのは,ストレージの仮想化技術である。新たに仮想化技術に対応した日立製のストレージを購入。ストレージの数が増えても管理が複雑にならないよう,ディスクを仮想化した。まずはバックアップ用ストレージを仮想化ストレージに移行。現在,本番用のストレージも,仮想化ストレージに移行している最中だ。

 バックアップに時間がかかる問題も解決した。新ストレージは,仮想化したディスク間でボリューム単位でディスク・イメージをコピーする機能を備えている。これを使うと,従来のようにサーバー上のソフトを使う必要がなく,短時間でバックアップが完了する。結果,「2時間程度で完了するようになった」(雨宮氏)という。