アステラス製薬は,サーバー仮想化技術「Virtual Server」を使ったサーバー統合に取り組んでいる。2006年4月に着手して以来,すでに100台近いサーバーを約10台の物理サーバーに集約した。2006年12月には,研究所にあった約20台のサーバーを3台の物理サーバーに統合。「スリムな組織で行き届いた管理を可能にしたい」(情報システム本部 情報システム企画部 次長 インフラグループ統括 竹沢幹夫氏)との思いから,今後もサーバー統合を進める考えだ。

 同社は2004年4月に,山之内製薬と藤沢薬品が合併して誕生した。山之内製薬から約600台強,藤沢薬品から約400台弱のサーバーを引き継いだ。以来,サーバーの棚卸しを進め,合計約1000台のサーバーを重複機能の整理によって約800台まで削減した。その課程で,古いOS(Windows NT 4.0)から移行できないパッケージ・ソフトを運用しているサーバーが約100台あることが分かってきた。

 移行できない理由は,新しいOSで稼働するバージョンが提供されていない,新バージョンはあっても移行後の品質チェックをする時間がとれない--など様々。こうしたパッケージ・ソフトを稼働させているサーバーの保守が切れるにつれて,サーバーの所有部門からサーバー仮想化ソフトを使ってハードウエアを代替したいという要望が上がるようになった。そこで,情報システム部門でサーバー仮想化ソフトの社内標準を決め,サーバー統合と併せて推進することを2006年1月に決めた。

 同社のサーバーは大半がWindowsベース。Linuxサーバーも若干あるが,統合するほどではなかった。そこで,Windowsサーバーに対応するサーバー仮想化ソフトの中から,社内標準を選ぶことにした。検討したのは,(1)ヴイエムウェアの「VMware ESX Server」,(2)同「VMware GSX Server」,(3)マイクロソフトの「Virtual Server 2005 R2」の3製品で,パフォーマンスとコストを比較した。

 (1)のVMware ESX ServerはゲストOSをデュアルCPU(当時)で稼働できたのでパフォーマンスは良かったが,コストが高かった。(2)のVMware GSX Serverと(3)のVirtual Server 2005 R2は,いずれもシングルCPUのみのサポートだったが,検証によりどちらも実用に耐えることが確認できた。そこで,(2)と(3)でコストを比較した。(2)への移行には当時で100万円台かかったのに対し,(3)は約20万円台(ボリューム・ライセンス契約でWindows Server 2003 R2, Enterprise Editionを購入した場合)で済んだことから,(3)のVirtual Server 2005 R2に決めた。同社は日ごろからマイクロソフト製品を多用しており,サポート面での安心感もあった。

 旧サーバーから仮想サーバーへの移行には,当初マイクロソフトが提供する移行ツール「VSMT(Virtual Server 2005 Migration Toolkit)」を使う計画だったが,なぜかうまく動かなかった。このため,仮想サーバー上にOSやパッケージ・ソフトをインストールしてからデータをコピーするなど,手作業で移行した。また,同社で使用していたウイルス対策ソフト「ウイルスバスター コーポレートエディション」やサーバー監視ソフト「NetIQ AppManager」が仮想サーバー上での動作を保証していなかったので,これらソフトはホストOS側にのみインストールすることにした。

 移行作業と並行して,Virtual Server 2005 R2を使用してサーバーを構築する事業部門が参照するための「標準構成定義書」を作成した。物理サーバーに必要なスペックや,仮想サーバーに割り当てるリソース量などの下限を,パフォーマンス・テストの実績を基に明確化。さらに,ホストOSとゲストOSのそれぞれについて,インストール方法や設定方法などを記述した。2006年4月から,Virtual Server 2005 R2の運用を開始した。

 2006年はWindows NT 4.0サーバーの統合を進めたが,今後はWindows 2000/2003のサーバーも段階的に統合する計画だ。ただしVirtual Server 2005 R2ではゲストOSにシングルCPUしか割り当てることができないので,「CPU使用率が高いアプリケーションを仮想サーバーに移行することは難しい」(竹沢氏)。そこで,小規模サーバーやテスト・サーバーなど,CPU使用率が低いものを優先的に仮想サーバーに移行する計画である。