実際に確認したことはないが、「カイゼン」という言葉はそのままで欧米人に通じるらしい。世界に冠たる日本製造業の秘訣として、この言葉が喧伝された時期があった。今日、日本企業の改善活動だけを取り上げて絶賛する人は減ったと思われるが、改善活動が不要になった訳ではない。
日経BP社のIT専門記者100人が執筆した『我らプロフェッショナル 世界を元気にする100人』を見ると、ITに関わる仕事に就いているプロフェッショナルは仕事の改善を意識している。そもそもITは仕事のやり方を変えるためのツールであるから当然と言えば当然である。
以下では、100人の中から「改善」に関連する発言をしてくださったプロフェッショナル13人を紹介する。政府や官公庁の情報システム、IT産業の構造、エンジニアの境遇、情報システムの設計や運用、情報システム利用現場など、改善対象は様々だが、改善を継続する姿勢は共通している。
ところで「目の前の仕事に没頭し、狭い範囲だけを改善していても限界がある、もっと広い視野で物事を見るべきだ」という主張がある。7月から週末スペシャルや夏休みスペシャルの場を借りて、「センスのいいプロフェッショナル」の条件を考えてきたが、一連の記事もそうした主張の一つと受け取られた可能性がある。
「センスのいいプロフェッショナルとは自分の仕事の本質を感じ取れる人」であり、そうなるには「日頃と違う視点を持って物事ごとを見る習慣を付けるとよい」と書き、日頃と違う視点として「顧客」や「世界」を意識する、仕事そのものではなくその「範囲を見直す」、「まったく異なる分野」を知る、「子供・学生」のことを考える、などを挙げてきた。
ただし「日頃と違う視点」を持って取り組む仕事の多くは、起業か新規事業創出に取り組まない限り、目の前の既存の仕事であり、その改善である。つまり、しっかり改善するためにも、新しい見方が求められるということだ。
しかも改善の徹底を通じても、「日頃と違う視点」を持てるようになる。現場の課題解決にとことん取り組むことで、仕事の「細部」にまで入り込み、仕事の本質を見出す。そこでつかんだ何かを、今の現場や次の現場に生かせる人がセンスのいいプロフェッショナルである。
我らプロフェッショナル 世界を元気にする100人
蝦名裕史氏
アシスト システムソフトウェア事業部 技術1部 部長
「運用業務の全体を俯瞰しよう、そうすれば生産性を高められる」
倉貫義人氏
ソニックガーデン社長
「“バーチャルCTO”としてスタートアップ企業を支援します」
ヴィヴェク・クンドラ氏
前米連邦CIO
「今は組織を小さくすることが賞賛に値する」
古賀和幸氏
エムティーアイ上席執行役員CTO
「カバレッジ100%を強制、テスト文化を根付かせた」
酒匂秀敏氏
ブレイズ・コンサルティング代表取締役
「コンピュータに5番目の役割を持たせたい」
柴田英樹氏
富士フイルムコンピューターシステム ITインフラ部部長
「大事なのは人・プロセス・ツールの三位一体」
渋谷直正氏
日本航空1to1マーケティンググループ主任
「データ分析オタクになってはいけない」
平井康文氏
シスコシステムズ社長
「ポストM&Aでは組織統合に時間をかける」
平鍋健児氏
チェンジビジョン社長
「働き方を変えて世界を変えたい!日本から」
水田哲郎氏
日立コンサルティング シニアディレクター
「日本のために要件定義スキルを底上げしたい」
宮崎富夫氏
元湯陣屋社長
「常に現場を見て、自分たちでソフトを改善するのが一番」
森川崇行氏
メディカルフォレスト代表取締役
「“今日から使えるシステム”で医療現場を変える」
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