写真●アシスト システムソフトウェア事業部の蝦名裕史技術1部部長
写真●アシスト システムソフトウェア事業部の蝦名裕史技術1部部長
[画像のクリックで拡大表示]

 「運用の改革が進まないのは運用業務の全体像が見えていないから」。システムのオペレーション業務に詳しいアシストの蝦名裕史氏(システムソフトウェア事業部 技術1部 部長)はこう指摘する。

 運用の改革はまったなしの状態にある。蝦名氏は「ITの適用範囲が広がり、しかもクラウドやモバイルデバイスなど管理対象が増え、新しいオペレーションが日々増えている。一方、既存のオペレーションも残っている。従来のスピード感で運用をこなそうとすると立ちいかなくなっている」という。

 限られた人員で増大する運用業務をこなすには、運用管理ツールによる自動化が有効な手段である。自動化によって、担当者による運用業務の属人化を排除し、運用品質向上と生産性向上を図る。こういう現場が増えているという。

 これまで障害監視やジョブ管理、ログ管理といった運用業務が自動化されてきており、最近は運用手順/プロセス管理の領域で自動化のニーズが高くなっている。手順やプロセス管理とは、検知した障害への対応、エンドユーザーからの問い合わせや作業申請への対応、仮想環境の設定作業といった業務で、従来は運用担当者のオペレーションが不可欠だった。

 にもかかわらず、運用手順/プロセスに自動化が浸透しているかといえば、そうではない。日経BPシステム運用ナレッジが2013年1月~2月にかけて実施した調査によると、運用業務を自動化する各種ツールの導入において、「運用手順/プロセス管理ツール」の利用は13.8%と、1割強の企業でしか使われていなかった。

 自動化ニーズは高いのにツールの利用率が低いのはなぜか。蝦名氏は理由の一つとして、「ツールが高価だったこと」を挙げる。

 このため、これまでは一部のデータセンターなどでの導入にとどまっていた。最近は「比較的安価な製品やオープンソース製品が増えており、より広範囲の運用現場で導入しやすくなっている」。

全体が見えないから標準化できない

 しかし、まだ問題はあると蝦名氏は続ける。多くの運用現場でオペレーションの標準化ができていないことである。

 「標準化されていない業務に、いくらツールを導入しても、自動化の恩恵を受けられない。それどころかオペレーションがより複雑になってしまう恐れがある」。

 厄介なのは、オペレーションの標準化それ自体が、運用現場にとって大きな壁となることだ。「担当者の多くが、運用業務の全体像を把握できていない」からである。

 運用業務はさまざまな業務が互い関連し合って構成される。それなのに、自分の担当する業務以外は見えていないケースが少なくない。

 運用業務の全体像をまとめたマップを作り、それぞれの業務がどういうプロセスか、業務間の関係がどうなっているのかを整理すべきと蝦名氏はいう。

 エンドユーザーとのやり取り、障害監視や障害への対応、インシデント管理や問題管理、変更管理に至るまで、一連の運用業務の全体像を俯瞰して見えるようにする。

 これがオペレーションの標準化を進める上で不可欠というわけだ。そうすれば、効果的な自動化によって運用業務の生産性を向上できる。

 運用業務全体を俯瞰できれば、問題点を分析して改善につなげることもできるようになる。蝦名氏は「運用業務はともすれば定常的で受け身の仕事と捉えられがちだが、継続的な改善の仕組みを作ることによって、主体的な業務に改革していけるはずだ」と話す。


島伸行
日経BPシステム運用ナレッジ
 技術系出版社で数々の書籍編集を手掛ける。2013年4月にスタートした情報システムの運用担当者のための専門サービス「日経BPシステム運用ナレッジ」に、編集/ライターとして参加している。