センスのいいプロフェッショナルとは自分の仕事の本質を感じ取れる人である。そのためには自分がいる現場を超えて物事の変化を察知する力が求められる。知覚の力を育むために、日頃と違う視点を持って物事ごとを見る習慣を付けるとよい。例えば以下の視点である。

●顧客の視点

 プロフェッショナルとアマチュアの違いは顧客の有無だと言われる。眼前の顧客だけではなく「眼前の顧客にとっての顧客」についても考えることが望まれる。

●仕事の範囲を見直す視点

 プロとして自分の仕事の範囲がどこまでかを把握しておかなければならないが、時と場合によってはその範囲を超えた行動が必要になる。新しい何かを実現するためには、既存の行動範囲にこだわってはならない。

●世界への視点

 日本企業に所属し日本の顧客を相手に日本語を使って仕事をしていたとしても「世界の中でこの仕事はどういう位置にあるか」を考えなければならない。いつ何時、世界の競争相手が出現するかもしれないからだ。

●細部への視点

 顧客の視点や仕事の範囲を見直す視点、世界への視点はいずれも、より高いところ、より遠いところから自分の仕事を俯瞰するものだ。逆に、現場の細部に分け入って仕事の本質をつかみ、そこから現場に戻って視野を広げることもできる。

●子供・学生の視点

 日本の将来を担うのは子供や学生であり、彼ら彼女らは将来の顧客でもある。子供や学生を直接相手にしていない仕事をしている人でも、時には「子供」「学生」「コンピュータ」を並べて考えてみるとよいだろう。

●まったく異なる分野の視点

 企業情報システムと無縁の分野においてコンピュータがどう使われているか。そうした話に触れることも時には必要だ。漫画家、画家、棋士、出版者、発明家、オーディオ制作、こうしたセンスが問われる世界でコンピュータは活躍している。

●自分で改善する視点

 眼前の仕事から離れるための視点を紹介してきたが、言うまでもなく自分の担当範囲で改善を繰り返すことも重要だ。「なぜ」を5回繰り返す自動車会社のように、現場の改善を徹底した結果として「現場を超えて物事の変化を察知する力」を身に付けられる。

●内省の視点

 もっとも近いところにあるが意外に感知していないのは「自分」である。センスには分別という意味もあり、自分自身の分別を付けられる人がセンスのいい人になる。プロフェッショナルは自立・自律の姿勢を持っており、内省はその前提と言える。

 以上は『「センスのいいプロフェッショナル」になる方法』という一文の中で紹介した6つの視点に「世界への視点」「自分で改善する視点」を加えたものである。「子供の視点」を「子供・学生の視点」に、「コードの視点」を「細部への視点」に、それぞれ改称した。

 今回は「顧客の視点」を持つために参考になるプロフェッショナルの発言を紹介する。これらは、日経BP社のIT専門記者100人が執筆した『我らプロフェッショナル 世界を元気にする100人』から選んだものだ。


浅井智也氏

浅井智也氏
モジラジャパン エバンジェリスト

「勉強でも仕事でも人のためになることをやりたい」


今井啓二氏

今井啓二氏
NPO法人ICT救助隊副理事長

「パソコンは万人にとって使いやすい機器であるべき」


浮川 和宣氏

浮川 和宣氏
MetaMoji社長

「“賢い紙”を作りたい」


きたみりゅうじ氏

きたみりゅうじ氏
イラストレーター兼ライター

「『動きを見せる』にはマンガが動画より優れている」


西郷彰氏

西郷彰氏
リクルートテクノロジーズ ビッグデータグループ シニアアナリスト

「『面白いじゃん』と言わせたい」


ジェームズ・チェン氏

ジェームズ・チェン氏
楽天執行役員

「クールなテクノロジーを開発し、10億人の人生を変える」


戸田 覚氏

戸田 覚氏
ビジネス書作家

「ユーザーニーズを超えた技術に警鐘を鳴らしたい」


戸辺昭彦氏

戸辺昭彦氏
日立製作所 スマートシティプロジェクト本部 副本部長

「社会インフラの全体最適が未来をつくる」


生川慎二氏

生川慎二氏
社内社会企業家

「実践あるのみ。理屈なんて後付けです」


平野洋一郎氏

平野洋一郎氏
インフォテリア社長

「アフリカのどこかで使われているシーンが頭に浮かんだんだ」


藤代裕之

藤代裕之
法政大学社会学部准教授

「情報発信の楽しさを伝えたい」


まつもとゆきひろ氏

まつもとゆきひろ氏
Ruby作者

「エンジニアの可能性を広げ、みんなを幸せに」


保田歩氏

保田歩氏
ガラポン代表取締役

「画質ではなく『使いやすい機能』で勝負、テレビ視聴に革命を」

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