「運用の安易な自動化は危険。人とプロセス、ツールの三位一体が大事だ」――。

 こう警鐘を鳴らすのは富士フイルムコンピューターシステムでシステム事業部 ITインフラ部部長を務める柴田英樹氏である。

 システム運用の現場で今求められているのは、コスト削減と少ない人数で運用できる体制作りである。解決策として期待されるのがツールによる自動化だ。人手による運用管理作業をツールに任せ、効率化を目指すものである。

 ただし、ツールによる安易な自動化を危険視し、まず運用プロセスを見直し、その上でツールを導入すべき、という意見もあった。さらに柴田氏はプロセスとツールをつなぐ「人」という要素を加えている。

プロセスとツールは「人」がつなぐ

写真●富士フイルムコンピューターシステムの柴田英樹氏
写真●富士フイルムコンピューターシステムの柴田英樹氏
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 柴田氏が提唱する、自動化成功の手順は次の通りである。まずプロセスによる標準化を実施する。次に担当者(人)の作業内容を考慮した省力化を図る。それからツールによる自動化である。

 実際、2012年に取り組んだサーバー申請・提供プロセスの自動化もこの手順で実践した。

 富士フイルムが2011年、約430台の物理サーバーを仮想環境に集約・統合したところ、利用部門の申請数が4~5倍に急増し、申請から仮想サーバーを使えるまでのリードタイムが1カ月半になってしまった。従来は数週間だったからかなりの遅れである。

 そこでまず、申請書のフォーマットを含めて申請プロセスを見直し、標準化した。次に申請者と運用担当者の作業内容を確認し、申請用のポータル画面を構築するなどして申請作業を省力化した。従来はサーバーの仕様を自由に決められたが、8パターンの仕様に限定し、運用担当者の仕様検討の時間を省くようにした。

 ここからが自動化である。自動化については、OSのインストールやパッチ適用といったサーバー環境の設定作業を自動化するツールを導入した。

 一連の改善により、サーバー申請プロセスを1カ月半から2時間に短縮できたという。

 柴田氏は「システム部門は迅速さと柔軟さがないといけない」と言い切る。今後もさまざまな運用業務を人・プロセス・ツールの三位一体で、標準化・省力化・自動化していくという。


池上俊也
日経BPシステム運用ナレッジ 副編集長兼プロデューサー
 日経ITプロフェッショナルにおいて、システム開発、プロジェクトマネジメント分野の取材・執筆を担当。2006年日経SYSTEMSの創刊に携わり、7年間、記者として活動。2013年1月、日経BPイノベーションICT研究所に移り、4月にシステム運用に関する専門サービス「日経BPシステム運用ナレッジ」を開始。