米Napsterが米国時間2月16日に,新たな“ビジネスモデル”概要を明らかにした。音楽ファイルに著作権管理の仕組みを組み込み,論争となっている侵害問題を解決するという。
 なお米国の第9巡回区連邦控訴裁判所(連邦控訴裁)は,米Napsterのファイル交換サービスのユーザーが著作権を侵害しているとの判断を下した。Napster社は,著作権で保護されているデジタル音楽の交換サービスを停止しなければならない状況に陥っていた。
 今回の発表でNapster社は詳細については多くを明らかにしていないが,同社はドイツBertelsmann AGの子会社でデジタル著作権管理技術(DRM)を手がけるDWS(Digital World Services)と共同で,新たな技術とビジネスモデルの開発に取り組んできたという。
 「これまでのピア・ツー・ピア型の個人間ファイル交換方式に変更を加えるものではないが,ユーザー間で転送されるファイルをCD-RやCD-RWなどに書き込めないようにするなどの規制を加える」(Napster社)。
 MP3ファイルに保護レイヤーを加えることで実現するという。またNapster社のクライアント・ソフトもこの著作権保護機能に対応できるように変更する。DRMは汎用のものではなくファイル交換サービスに特化した新たなアーキテクチャを採用する。
 「今日の発表は一つの重要な事実を明白に示すもの。Napster社の将来はそのビジネスモデルにかかっている。技術の問題でも法律の問題でもない。Bertelsmann社およびBertelsmann eCommerce Groupと我々の協力体制は,新たなビジネスモデル構築に向けた重要な一歩。これによりアーティストや作詞/作曲者,著作権所有者に利益を還元できる」(Napster社暫定CEOのHank Barry氏)。
 Napster社のファイル交換サービスを巡っては,米レコード協会(RIAA:Recording Industry Association of America)がNapster社の業務に著作権侵害があるとして業務の完全停止を求め,北カリフォルニア連邦地裁に提訴していた。2000年7月に同地裁はNapster社にサービスの事実上の停止を求める仮決定を下した。しかし米国時間2月12日に,サンフランシスコ第9巡回区連邦控訴裁判所(連邦控訴裁)は「Napster社のユーザーが著作権を侵害している」との判断を下したものの,仮決定の内容は「範囲が広すぎる」として同地裁に判決の修正を命じた。
 Napster社とBertelsmann社は米国時間2000年10月31日に,両社が個人間のファイル交換サービスで提携したことを明らかにしており,このとき新たなビジネス・モデルのもとNapsterコミュニティのメンバーに向けた会員制ファイル交換サービスを展開していくと発表していた。
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