(2001.2.12,TechWeb News

 米第9巡回区連邦控訴裁判所(連邦控訴裁)は,米Napsterのファイル交換サービスのユーザーが著作権を侵害しているとの判断を下した。米Napsterは当面,業務を続けることができるが,これまで通りというわけにはいかないようだ。

 Napster社は著作権で保護されているデジタル音楽の交換サービスを停止しなければならない。しかし,すでに下されている仮処分命令の内容を連邦控訴裁が明確にするまでは,これまで通りサービスを続けられる。

 米レコード協会(RIAA:Recording Industry Association of America)はNapster社の業務に著作権侵害があるとして業務の完全停止を求めていたが,サンフランシスコ第9巡回区連邦控訴裁判所の3人の判事(Mary M. Schroeder判事,Robert R. Beezer判事,Richard A. Paez判事)は米国時間2月12日に,この要求を却下した。

 しかし3人の判事は連邦控訴裁に対して,同地裁が先に下していたNapster社に対する仮処分命令の内容を修正するように命じた。

 これに関してNapster社は,「今すぐには戦いを断念しない」というコメントを出している。

 同社は,「Napsterは業務を停止しない,しかし今回の判決の結果として,そうなる可能性もある。われわれは3人の判事の下した判断に非常に失望しており,これについては再審理を求めていくつもりだ」と短い声明のなかで述べている。

 2000年7月に,連邦控訴裁のMarilyn Hall Patel主席判事は米レコード協会を中心とするレコード会社5社に有利な判決を下していた。原告が著作権を所有する音楽ファイルをNapster社の会員がやり取りすることを禁ずる仮処分命令である。

 数日後に,第9巡回区連邦控訴裁は著作権法の問題を審理したいとの理由で,この仮処分命令の執行を延期した。

 そして同控訴裁は米国時間2月12日に,Napster社が「承知していながら原告の著作権侵害の行為を助長し,援助もしている。またその行為から利益を得ている」という判断を示した。

 同控訴裁はまた,「Napster社は音楽の著作権を保護できる能力を持っている」とする下級審の判断と一致する見解も示した。

 この判決を聞いたRIAA会長兼CEOのHilary Rosen氏は次のように述べている。「明らかにわれわれの勝利だ。控訴裁は仮処分命令の正当性だけなくその必要性も認めた。そして我々が主張したあらゆる法的な問題に対して我々に有利な判断を下した」(同氏)。

 さてNapster社はどうなるのだろうか?

 ヒューストンのハイテク調査会社Currid & Co.の社長でアナリストのCheryl Currid氏は,「最終的な判決が下るまでは,Napster社はどっちつかずの立場に置かれることになる。Napster社が今後どうすべきかについては,やがて誰かが決定を下し同社に伝えなければならない」と述べている。

 Napster社は当時ノースイースタン大学の学生だったShawn‘Napster’Fanning氏によって設立された。同社のソフトウエアを使えば,インターネットに接続しているユーザーは誰でも,MP3フォーマットに変換した音楽ファイルを無償でダウンロードすることができる。なおFanning氏はすでにNapster社の経営からは退いている。

 Napster社は昨年10月に原告の1社であるドイツのBertelsmann AG(米BMG Entertainmentの親会社)と契約を結び,音楽事業の主流へと一歩近づいた。このときBertelsmann社は,アーティストに対する著作権使用料の支払いを可能にする加入者ベースの商用プログラムをNapster社が開発すれば,訴えの一部を取り下げるとしていた。またこのプログラムが開発された際にはNapster社に出資するという計画も立てている。

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