米Napsterの控訴審判決の結果を受けて米Gartner Groupが米国時間2月13日に,今後の市場に関するコメントを出した。それによるとピア・ツー・ピア型のファイル交換サービスは成功するビジネス・モデルとして成長を続けるという。概要は以下の通りである。

 Napsterの控訴審判決で第9巡回区連邦控訴裁判所は,著作権で保護されているデジタル音楽の大量交換を容易にする集中型ディレクトリを作成することは違法との判断を下した。また同裁判所は,このようなディレクトリを監視する技術的手段を持たないとするNapster社側の主張を退けた。

 しかし,今回の判決で最も重要なのは,ピア・ツー・ピア型のファイル交換サービスが著作物(著作権データ)の無許可の交換に使用される可能性があったとしても,それ自体は違法行為ではないと裁判所が判断したことにある。事業者が何のファイルを交換しているかや,違法な行為を止めさせることが技術的に可能であるということを知り得ない限り,このビジネス・モデルは成功するとGartner社は分析している。

 「今回の裁判所の判決と,ピア・ツー・ピア技術が進歩するペースを考慮すると,音楽業界は数カ月もすれば,この技術を採用するビジネス・モデルを打ち立てることになるだろう。これは数カ月単位の話であって年の単位ではない。AOLやAimsterなどの多くのピア・ツー・ピア型ファイル共有サイトが証明しているように,“Don't ask, don't tell(尋ねるな,教えるな)”という手法が成功の鍵となる」(Gartner社アナリストのRob Batchelder氏)。

 「音楽業界は今後も真っ向から技術革新と戦うことになる。しかし,技術に関して裁判で争うことにエネルギーを使うよりも,技術と協力することに注力すべきだ」(Gartner社アナリストのPJ McNealy氏)。

 「Napster社のサービスは原始的なものだった。Napster社はログオンしたユーザーのファイル・リストを集め,検索ディレクトリを作成し,ユーザー同士が直接ファイルを交換できるようにした。この事態を恐れ,大いに危険を感じていた音楽業界からの挑戦を受けてNapster社は破れた。だが,音楽業界は勝利したわけではなく,不慣れな挑戦者との戦いで優位に立ったに過ぎない。Aimster社など,Napster社に代わるサービスがすでに台頭してきており,彼らはNapster社が直面したような不利な立場に立たずにすむ方法を採用するだろう」(Gartner社)。

 なお裁判所は,個人が自分で使用する目的で,著作権で保護されたデータをコピーすることについては「公正使用(フェア・ユース)」の原則によって認めらるとしたものの,インターネットを介してこれらコピーを他者と交換することは認められないとの判断を示した。さらに,コンピュータを使って音楽を再録音することは,「家庭オーディオ録音法(Home Audio Recording Act)」で禁止されていると断定している。

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