米Gartner Dataquestが米国時間6月18日に,「携帯情報端末(PDA)市場ではこれまで米Palmが売上高ベース,出荷台数ベースとも首位を堅持してきたが,2001年第2四半期に米Compaq Computerが売上高ベースで初めてPalm社を追い抜き,首位に踊り出る」との分析・予測を発表した。CompaqのiPaq

 Gartner社によれば,Palm社の3~5月期におけるPalm機の売上高は1億3000万ドルから1億3500万ドルの規模となる見込み。出荷台数は約70万台だった。ちなみに,同社2000年9月~11月期におけるPalm機の売上高は5億700万ドル。売り上げは2001年に入り急速に落ち込んでいる。またPalm機を提供している米Handspringの売上高は,6000万ドルから6500万ドルの規模となる見込み。

 一方のCompaq社は,第2四半期(~6月30日)におけるiPAQ製品の売上高が2億ドルを超える規模になる見込みである。出荷台数は約50万台。2000年第4四半期の25万台から倍増している。

 Gartner社は,iPAQ躍進の一因として,iPAQの製品単価がPalm機に比べ高いことを挙げている。Palm機の価格帯は129ドル~449ドル。一方のiPAQは399ドルと599ドルで,主力の「H3635 Pocket PC」は599ドル。(価格はいずれもWWWサイト掲載のもの)

 「企業が電子メールやショート・メッセージングの導入や無線LAN対応などで,PDAを大量に一括購入するケースが増えている。しかし,Palm社はこうした企業向けの販売で苦戦している。端末が提供する機能や技術の面でイノベーションが欠けていることが大きなマイナス要因」(Gartner社主席アナリストのTodd Kort氏)。

 Gartner社は,「2000年第2四半期に米3ComからPalm社が分離独立して以来,Palm OSにほとんど機能向上がみられない。市場では,米MicrosoftのWindows CE 3.0にも追いつかれつつある」と指摘する。

 企業はMicrosoft社のOutlookやOfficeなどのアプリケーションとの連携強化を図るため,PDA端末にWindows CE搭載機を選択するケースが徐々に増えているという。さらに,Microsoft社は2001年末までにWindows CEの新版となる「Talisker」(開発コード名)を投入の予定であり,Microsoft社が企業向け市場でさらに勢いを増すとGartner社は分析している。

 「Palm機は企業向け市場でも引き続き安定した強さを維持するが,ユーザーは2年以内に端末を買い換えるため,買い替え期にPalm機は競合製品と比較されることになる」(Gartner社Mobile Business Strategiesプログラム担当副社長のKen Dulaney氏)。

 また,個人ユーザー向け市場では,iPAQのほか,ソニーが健闘しているという。

 Palm社は現在新OSの開発を進めており,2002年第4四半期に投入する予定である。また,無線インターネット機能搭載機Palm VIIxの後継モデルを2001年後半に提供する。Dulaney氏は,「新OSやVIIxの後継投入だけでは不十分。iPAQの機能に対抗しうるような機能を備えたハイエンド機の投入を検討すべき」と指摘する。

 さらにDulaney氏は,経営体制についても言及している。「Palm社はソフトウエア部門とハードウエア部門を分社化する事業再編を行うべき。例えば,Microsoft社や英Symbianはソフトウエアの成長を目指すソフトウエア・ベンダーであるが,Palm社はハードウエアの成長を目指すソフトウエア企業という点で異なる。分社化することで,株主にとって投資利益が明確になるというメリットもある」(Gartner社)。

 なおPalm社は2001年3月に,企業向けソリューション事業の拡充を図るとして米Extended Systemsの買収計画を発表していたが,5月に入り,「景気と市況の低迷のため」として,これを断念している

◎関連記事
<Palm社経営/戦略関連>
米パームが人員削減や本社建設延期などのリストラ策,PDAは累計1300万台に
米Palmが業績見通しを大幅下方修正,Extended Systemsの買収計画を断念

<次期Windows CE>
米マイクロソフトがWindows CE次期版「Talisker」のベータ版をリリース
米マイクロソフト,次期Windows CEのソースを米インテルやNECなどに公開へ

<Compaq関連>
米コンパックが“デジタル家電”を強化,デジタル・オーディオ機器に新境地
米コンパックが携帯端末「iPAQ」の新モデルを発表,内蔵メモリを倍増
<Palm機関連>
米パームがSD対応のBluetoothカードを発表,価格は150ドル以下で出荷はQ4
米パームがPalm OS 4.0搭載の「m505」を発表,カラー液晶で拡張スロット装備
米パームが199ドルの「Palm m105」発表,RAMは8Mバイトでm100の4倍
米Palm,次期版OSではBluetooth連携も視野に
米パーム,携帯電話を介してインターネット接続するためのキットを発表

<市場>
Palmを追撃,米マイクロソフトがPocket PC向けアプリ6000本を追加投入へ
世界の携帯情報端末市場,2004年に6340万台/260億ドル規模に成長---。IDCの調査

[発表資料へ]