Windowsのテーマの中で2008年に読まれた記事を改めて確認してみると,大きく2つの傾向が見られた。まず1つは,Windows XP Service Pack(SP)3やVistaに関する記事が,相変わらずよく読まれたというもの。こうした“次”のOSに関する話題は,Windows分野で常に注目を集める定番の人気記事であり,これらの記事がよく読まれたのはある意味で予想通りの結果といえるだろう。
意外だったのは,ニュースではない“お勉強”系の記事もよく読まれたという,新しいもう1つの傾向だ。代表的なのは,「本当に知っている?Windowsの基礎」シリーズで,10月から連載を開始したばかりなのに,この連載の中の記事がいくつもアクセス数の上位にランキングされた。だれでも体験している身近なWindowsの動作について,「どうやって実現しているのか」という仕組みをやさしい解説で再確認するというニーズは高いようだ。
4年ぶりのXP向けSPに高い関心が集まる
これら2008年の2つの傾向について,もう少し詳しく分析してみよう。まずは,新しいOSに関する話題からである。Windowsを使っているユーザーにとって,自分の使っている環境がどう変わろうとしているのかは気になるところ。2008年の時点でもっとも広く使われているOSがWindows XPなことは間違いないだろう。そうしたXPユーザーにとって,2008年に気になったのは5月に登場した新サービス・パックのWindows XP SP3と,2007年の1月に登場したVistaの2つだったようだ。
代表的なのは1位となった「Windows XP Service Pack 3のFAQ 【更新版】 」である。2月の公開以来の約1年間を通じて,Windowsのテーマ内でのアクセスランキングでほぼ10位以内をキープする人気記事となった。この記事では,Windows XP SP3について,概要や注意点をQ&A形式で解説している。サービス・パックとは,マイクロソフトが製品出荷後に提供された複数のプログラムをまとめたパッケージ。含まれるプログラムには,セキュリティ・ホールなどの不具合を修正するものが多いが,新機能を追加するものも含まれることがよくある。その一方,OSに大幅な修正を加えるため,それまで使っていたアプリケーションや周辺機器が使えなくなるというトラブルが発生することもままある。このため,マイクロソフト製品を使い続けていく上でSPに関する情報収集は欠かせない。この情報収集に便利な記事として,「Windows XP Service Pack 3のFAQ 【更新版】 」は息長く読まれ続けたのだろう。
今回のXP SP3は,前回のSP2から約4年ぶりとなる,Windows XP向けの新サービス・パックである。このため,Windows XPのユーザーにとっては大きな関心を持ったようだ。1位以外にも,8位の「Windows XP SP3,4月29日からダウンロード可能に」,10位「『IE7を削除できなくなる』――Windows XP SP3適用上の注意点」といったニュース記事もランクインしている。
Vistaへの移行には尻込みしている様子も
Windows XPの後継OSであるWindows Vistaに関する記事もよく読まれた。3位に「Vistaが『遅い』と感じませんか?」という記者の眼がランクインしたほか,4位の「『Vistaではシャットダウンよりもスリープを使ってほしい』---マイクロソフト」,6位の「Vistaネットワーク完全ガイド」,18位の「Windows Vista SP1を入手、性能はいかに」といった記事がアクセス数の上位に入っている。Windows Vistaの情報については,高い関心を占めていることがわかる。だが,Windows Vistaに関しては,読者がやや複雑な意識をもって受けとめている様子が感じられる。一言でいうと,Vistaへの移行を歓迎しない姿がうかがえるのだ。たとえば,9位の「64ビット版Vista最大の欠点」,13位の「Windows Vista,ユーザーを悩ませる『10の厄介事』」,16位の「Vistaが『遅い』と感じませんか?その2」,17位の「現時点で判明した『Windows Vistaの欠点』を暴く 」といったVistaのマイナス点を指摘した記事もよく読まれている。Vistaを使いこなすための記事よりも,そうしたマイナス面に関する記事のほうが読まれているところから,Vistaの導入にとまどっているユーザーの姿が透けて見える。
また,19位に「Windows XPを取り巻くうわさに注意」という記事が入っている。これは,2008年6月末のWindows XPプリインストール販売終了に伴い,XPの新規導入やサポートをやめるのではないかといううわさについて報じたもの。同様に,7位に入っている「Windows XPへの『正しい』ダウングレード法とは?」のように,Windows Vistaを購入したユーザーがWindows XPにダウングレードして利用する場合のノウハウについて解説した記事もよく読まれた。やはり,Windows XPを使い続けたいと考えているユーザーが,かなり多くいるようだ。
仕組みを解説する勉強系の記事も人気
一方,“お勉強”系の記事が大きな注目を集めたのが,2008年の大きな特徴といえるだろう。たとえば,2位の「Windowsはどうやって起動しているのか?」は10月6日の公開以来,実質3カ月弱の期間で通年でも2位となるアクセス数を集めたことになる。これ以外にも,5位に「面倒なシャットダウン操作がなぜ必要なのか?」,14位に「なぜ外部からWindowsマシンに侵入できるのか? 」がランクインしている。これらは,いずれも「本当に知っている?Windowsの基礎」として連載したシリーズ内の記事である。このシリーズでは,だれもが気軽に使っているWindowsについて「いったいどうやって実現しているの?」と感じる素朴な疑問についてわかりやすく解説している。ニュースのような新しい事実はないものの,知っているようで実はあやふやになりがちな部分について,図を交えながら丁寧に解説したのが好評を博したようだ。
「本当に知っている?Windowsの基礎」シリーズは,アーキテクチャ編,ネットワーク編,セキュリティ編,デスクトップ編,続・アーキテクチャ編という構成で35本の記事を公開している。年末年始の休暇などでまとまった時間がとれたならば,ぜひご覧になって自分の知識を再確認していただきたい。なお,もっとも好評だった「Windowsはどうやって起動しているのか?」に関しては,Vistaでの状況を解説した記事を年明けに追加する予定である。こちらもご期待いただきたい。