2007年度中間期の国内企業の決算を振り返ると,通信や企業の堅調なIT投資に支えられ,全体としては好調な業績発表が多かった。ただし,苛烈な市場シェア争いの続く移動体通信業界では,大手通信会社の間でくっきりと明暗が分かれた。また,金融業界の旺盛な設備投資を頼りに業績を拡大してきたSI業界では,大手金融の業績が下降線を辿る中,下半期に向けて先行きに不透明感が増している。

ソフトバンクの躍進目立つ通信業界

 通信業界では,今年はじめにホワイトプランとWホワイトの低価格プランに打って出たソフトバンクが,当中間期に売上高が前年度同期比21.8%増の1兆3647億4500万円,営業利益が同49%増の1677億4600万円となり,快進撃が続く。NTTドコモの売上高が同2.4%減の2兆3251億円,営業利益が21.0%減の4085億円と大幅減益となったのと対照的な結果となった。

・ソフトバンク中間決算は増収増益,他社の分離プランは怖くないと孫社長
・ドコモの中間決算は減収減益,携帯端末の新販売モデルなども発表
・KDDIの中間決算は増収増益,au買い方セレクトは「分離プランの決定版」と小野寺社長
・IIJの2007年度中間決算,インターネット接続サービス好調で営業利益3割増
・イー・アクセスの2007年度中間決算は増収減益,基地局建設の投資負担重く

不振事業が足を引っ張る大手情報通信

 日立製作所,NEC,富士通の大手情報通信3社は,一部のハードウェア事業の不振が業績の足を引っ張る決算となった。日立は,情報通信システム事業に限れば,売上高は同9%増の1兆2545億円だったものの,営業利益は同10%減の124億円にとどまる。ハードディスク・ドライブ(HDD)事業が依然として赤字体質にあるからだ。富士通も売上高は過去最高だった2000年中間期を上回ったが,ノート・パソコン向けHDDの価格下落などが影響し減益となった。NECはパソコン・携帯事業やエレクトロニクス事業の利益率が改善し,経常利益が98億円と前年同期の赤字から黒字転換した。しかし,これまで好調だったIT/NWソリューション事業がハードウェア販売の不振によって大幅減益となった。

・日立の2007年度中間決算は1216億円と大幅増益,HDD事業は依然赤字
・富士通の2007年度中間決算は増収減益,デバイスや通信系ハードの不調が響く
・NECの2007年度中間決算,黒字転換するもIT/NWソリューション事業は不振

下半期に不透明感残すSI業界

 昨年から金融業界の旺盛な設備投資で業績を回復・拡大してきたSI業界。2007年中間期も余勢を買って好調な決算が目立った。NTTデータは金融分野の売り上げ増や,連結子会社の拡大によって,売上高が前年同期比2.8%増の4661億円,営業利益は同0.3%増の376億円となった。今回初めて受注損失引当金を51億円計上した。NRI(野村総合研究所)も証券,銀行,保険など金融サービス業向けのシステムコンサルティングとITソリューションが好調,営業利益が同31.5%増の274億1400万円となった。

 一方で,ハードウェア販売が足かせになったSI企業もある。住商情報システムは自動車業界や証券・銀行向けのシステム開発が伸びたが,ケーブルテレビのセットトップボックスの販売やネットワーク関連事業の落ち込みが影響し,減収増益となった。新日鉄ソリューションズも旺盛なIT投資を支えに増収増益だったが,ハードの販売は減収だった。

 当中間期,金融各社は相次いで減益決算を発表しており,下期以降のIT投資の受注については不透明感が増している状況だ。

・NTTデータ,2007年度中間期は増収増益,金融分野の売り上げが拡大
・NRIの2007年度中間決算,金融業向けサービス好調で営業利益3割増
・住商情報システムの中間決算,製造・金融向け好調も減収増益
・新日鉄ソリューションズの中間決算,旺盛なIT投資を支えに増収増益
・日本ユニシス、9月中間期はネットマークスの買収効果で増収増益

SNSの勢いが加速するインターネットサービス業界

 インターネットサービス業界では、SNS最大手のミクシィの好調が光った。当中間期の売上高は前年同期比137.2%増の46億2000万円,営業利益は同106.2%増の18億1300万円といずれも倍増。SNS機能を活用したタイアップ広告の販売などが順調に伸びた。

 一方、ヤフーは、広告事業が前年同期比27%増と好調だったが、「Yahoo!オークション」の取扱高が伸び悩むなど個人向けサービス事業の売り上げが0.7%減少した。連結ベースの売上高は同17.2%増の1177億3500万円,営業利益は同21.9%増の597億5500万円だった。また、楽天は減収増益の決算だった。EC(電子取引)事業の拡大とクレジット事業の建て直しによる利益改善が、証券事業の営業利益低下を補い,営業利益は同11.8%増となった。

・ミクシィの2007年度中間決算,広告売り上げ好調で利益倍増
・ヤフーの2007年度中間決算は増収増益,個人向けサービス売り上げは微減
・楽天の2007年第3四半期決算,クレジット事業建て直しで減収増益