米Intelが米国時間11月26日に,同社の研究者が新たなトランジスタ構造を開発した,と発表した。トランジスタの速度や,消費電力/発熱の低減について,「劇的な進歩となる技術」(Intel社)としている。これにより, LSIのトランジスタ数が18カ月で2倍になるという「ムーアの法則」を継続するための技術的障壁が取り除かれるという。
Intel社はこの新しいトランジスタ構造技術を「depleted substrate transistor」,その素材を「high k gate dielectric」と名付けた。前者は新しいタイプのCMOSトランジスタ。絶縁層の上の超薄シリコン層内にトランジスタを形成することでスイッチのオン・オフを高速化する。
後者はゲート誘電体の新素材となるもので,現在の二酸化けい素に代える。二酸化けい素を使った場合に比べて,ゲート漏れ電流を1万分の1以下に低減できるという。
なおIntel社は,ワシントンで12月3日に開催予定のIEDM(International Electron Device Meeting)でこの二つの技術について発表を行う予定である。
Intel社では,これらの技術を使って開発するトランジスタを「Intel TeraHertz」トランジスタと呼んでいる。これは,1秒に1兆回のオン・オフを行うことから名付けたという。ちなみに人間が同じ回数のスイッチをオン・オフした場合1万5000年かかるという。
同社がこれまで開発してきた高速小型トランジスタ技術と組み合わせることで,リアルタイムの音声/顔認識、キーボードなしの演算,これまでよりも高性能でバッテリ駆動時間の長い小型電子機器など,新たな用途が可能となる,とIntel社では説明する。
Intel社ではこれら技術を2005年にも製品に取り入れていくという計画を立てている。
「これまでの我々の研究でさらに高速小型のトランジスタを開発できることは証明されていた。しかしそこには消費電力,発熱,漏電といった根本的な問題が存在している。我々のゴールはこうした障壁を克服し,現在のマイクロプロセサの25倍のトランジスタを集積しながらも消費電力は増やさないというチップを作ることである」(Intel Labsコンポーネント・リサーチ部門ディレクタのGerald Marcyk氏)
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