米Motorolaが同社のIII-V族化合物とシリコンを組み合わせた半導体技術の商業化を推進するため,100%子会社の米Thoughtbeamを設立した。Motorola社が米国時間11月14日に明らかにしたもの。Thoughtbeam社の運営は,Motorola社副社長のPadmasree Warrior氏が行う。

 Motorola社が9月4日に発表したこの技術は,III-V族化合物であるガリウムひ素(GaAs)の薄膜をシリコン・ウエーハ上に生成するもの。これにより「半導体業界が過去30年間悩んできた問題が解決し,低価格の光通信デバイス,高周波無線デバイスの開発への道が開ける」(Motorola社)という。

 III-V族化合物半導体とは,元素周期律表のIII族とV族の元素を組み合わせた化合物半導体である。原材料や結晶生成のコストが高くつくことから,シリコンに比べ割高である一方で,レーザー発光が可能になるなど,これまでのシリコンにない特性が得られるというメリットがある。

 Motorola社では,この技術のおよぼす影響として次の事柄を挙げている。

・III-V族化合物半導体製造において基板の寸法を大きくし,基板や処理にかかるコストを削減できる

・III-V族化合物半導体の優れた電気的,光学的な性能と,すでに完成の域にあるシリコン技術を組み合わせることで,新たな集積半導体回路を作成できる

・シリコン技術と投資済みの資本の寿命を延ばすことができる

・光通信などにおいて,高性能とコストのバランスを改善できる

・より高い集積度が実現できる

 なお同社は,この技術に関連して280件以上の特許を申請しているという。

 また同社は同日,エピタキシャル・ウエーハのアウトソーシング生産などを手がけるIQE社とのあいだで,この技術を使った製品の生産に関するライセンス契約を締結したことも明らかにした。

 「次のステップは,見込み顧客の内部評価向けにGaAS-シリコン・ウエーハの供給を実現すること。そのため商業化ライセンスに加え,Motorola社の“Evaluation Program”向けGaAs-シリコン・ウエーハを生産,供給する権利をIQE社に与えた」(Padmasree Warrior氏)

 IQE社では,2002年の前半に評価用ウエーハの供給を開始できるとみている。

 さらにMotorola社は,IQE社が行うこの技術の商業化を支援するため,IQE社が行う株式発行による資本調達に対して1000万ドルの投資を行うことに合意している。

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