米IBMが米国時間4月27日に,炭素原子でできた直径が数nmの「カーボン・ナノチューブ」を用いた新たなトランジスタ技術を開発したことを明らかにした。

 「現在のシリコンより,小型高速で消費電力の低いチップが製造できる」(IBM社)という。

 IBM社はカーボン・ナノチューブでトランジスタの列を「世界で初めて」(IBM社)形成した。カーボン・ナノチューブは炭素分子で構成された直径数nmの細い円筒状の物質。シリコンを用いたトランジスタに比べて1/500というサイズ。IBM社の新技術は,これまで不可能とされていたナノチューブ・トランジスタの大量形成を可能にするもの。

 ナノチューブは,サイズや構造に応じて電子的性質が金属性または半導性になるという特徴を備える。トランジスタとして使えるのは半導性ナノチューブだけだが,どのような方法を用いても金属性と半導性のナノチューブが互いにくっつき合った束状の形態になってしまうことが問題だった。金属性と半導性のナノチューブを分けるために一つひとつ操作していたのでは,莫大な時間が必要になる。そのため,ナノチューブをトランジスタとして利用するのは実用的ではなかった。

 IBM社は「Constructive Destruction(建設的破壊)」と呼ぶ手法でこの問題を解決した。具体的には,金属性のナノチューブを破壊して必要な半導性ナノチューブだけを取り出し,半導性ナノチューブの高密度配列を作成する技術である。

 ムーアの法則ではLSIのトランジスタ数が18カ月で倍増するとされている。しかし多くの科学者は10年~20年以内にシリコンが物理的限界に達し,1チップ当たりのトランジスタ数を増やすことはできなくなると予測している。「IBM社が開発した技術は,シリコン素材のチップの小型化が限界を迎えたときに,新たな素材や製造技術を開発する上で重要な一歩となる」(IBM社)。

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