Bell Labの発見したヒトデの「レンズ」米Lucent Technologiesの米Bell Labs(ベル研究所)の研究者が,クモヒトデ類の骨に含まれる石灰と似た方解石の結晶が,無指向性の光受容器として機能することを発見した。Lucent社が米国時間8月22日に明らかにしたもの。

 詳細を英国の科学雑誌「Nature」の8月23日号に掲載するという。この発見により,より優れた光通信機器用マイクロレンズを開発できる可能性があるという。

 この発見はベル研とイスラエルのWeizmann Institute of Science,米Natural History Museum of Los Angeles Countyの研究者による国際的な共同研究によってなされた。

 クモヒトデ類は蛇尾類とも呼ばれる無脊椎の海洋生物で,小さな円盤状の体から通常5本の細長い腕が伸びており,ヒトデやウニといった棘皮門に属する生物である。

 今回の研究で,クモヒトデ類の腕の骨はレンズのように光を収束させる球状の物体が連なった構造をしていることが判明した。レンズ表面からの焦点距離は5μmで,骨のなかにある神経で光信号を検知できる。神経と数千ある方解石の結晶が組み合わさることで体表面の広い部分が複眼として機能するため,天敵を発見し逃げるのに役立っているという。

 この方解石のマイクロ・レンズでは,複屈折や球面収差(通常のレンズで発生する歪み)をうまく補正できる。この構造に模倣したレンズを作ることで,光通信機器向け部品や,LSI設計・製造のEUV(Extreme Ultra Violet:超紫外線)リソグラフィー技術といった分野で応用できるという。

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