米Intelは米国時間3月8日に,同社の技術者がEUV(Extreme Ultra Violet)リソグラフィーのフォトマスク(マスク)製造技術の開発に成功したと発表した。

 「業界標準技術に準拠したEUVマスク製造技術はこれが始めて」(Intel社)という。

 次世代LSIの製造技術であるEUVリソグラフィーとは,チップの焼付けに可視光線でなく超紫外線(EUV)を使う技術である。可視光線に比べEUVの方が「ペン先」が細いことから,より精細な加工ができ,結果として少ない面積に多くの回路を集積することが可能となる。

 Intel社によると,高品質のマスクはEUVリソグラフィー技術の実現で重要な要素の一つという。現在のチップ製造に使われているマスクは光線を通している。しかし,EUVは大気中やほぼすべての物質に吸収されてしまう。このためEUV対応のマスクでは光線を反射させる必要がある。

 この問題を解決するため,Intel社ではEUV Limited Liability Corporation (EUV LLC)の開発した製造プロセスを用いて,熱膨張率が低い基盤に多層の超薄シリコンとモリブデンを塗布した。これによりEUVの周波数に合わせた,反射率の高い基盤ができたという。ちなみにEUV LLCは,Intel社,Motorola社,米Advanced Micro Devices(AMD),米Micron,独Infineonなどが設立したコンソーシアムである。

 この技術は,現在の業界標準技術を拡張することで実現できるのが特長。なおIntel社と米Motorolaはすでにマスク製造技術を開発していたが,これまでは既存技術との互換性がなかった。また今回の技術は,多層間の乱反射を防止するために低温マスク・プロセスを用いたことなども特長という。焼き付けの線幅は50nmである。

 Intel社では,EUV技術を用いることでシリコン・ウエーハにおけるムーアの法則が今後10年は続くとしている。

 Intel社はベータ版EUVツールの初版を2003年までに提供する予定である。また2005年までには製造ツールの提供を行うとしている。EUV技術を使うことで,2005~2006年には同社のプロセサの動作周波数が10GHzを超えるという。

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