米Motorolaは米国時間9月4日に,米Motorola Labsの研究者がIII-V族化合物半導体とシリコンを組み合わせた半導体材料の開発に成功したと発表した。これにより「半導体業界が過去30年間悩んできた問題が解決し,低価格の光通信デバイス,高周波無線デバイスの開発への道が開ける」(Motorola社)。

 III-V族化合物半導体とは,元素周期律表のIII族とV族の元素を組み合わせた化合物半導体である。原材料や結晶生成のコストが高くつくことから,シリコンに比べ割高である一方で,レーザー発光が可能になるなど,これまでのシリコンにない特性が得られるというメリットがある。

 Motorola Labsはシリコン・サブストレート(基板)の上にIII-V族化合物の薄膜を成長させることに成功した。これはシリコンとIII-V族化合物のあいだに中間層を入れることで実現した。これまではシリコンとIII-V族化合物は,結晶構造が異なるために隙間ができるなど,結合することが困難だった。

 III-V族化合物半導体には,ガリウムひ素(GaAs),りん化インジウム(InP),窒化ガリウムなどがある。Motorola LabsではGaAsとシリコンを結合させるための物質の“レシピ”を発見したという。これにより二つの素材のあいだに起こる歪も減らすことができた。なおMotorola Labsでは現在,InPなどの化合物を結合するための物質も開発中という。

 これにより,「III-V族化合物半導体製造において,基板の寸法を大きくでき,基板や処理にかかるコストを削減できるなど多くのメリットが生まれる」とMotorola社は説明する。

 このほかMotorola Labsは,シリコン・ウエーハ上に8インチのGaAs層を成長させることに成功した。またIQE社と共同で,12インチのシリコン・ウエーハ上にGaAs層を形成した。これを用い,実際に動作するパワー・アンプを開発した。

 Motorola Labsは9月4日にブラジルで開催されるInternational Workshop on Device Technology,9月11日にテネシー州で開催されるMaterials Research Society Workshopでこの技術を披露する予定である。

 Motorola社ではこの技術に関連した270の技術の特許を申請しているという。将来はこの技術を広くライセンス供与していくという計画を立てている。

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