(2001.3.1,Mark Hachman=TechWeb News)
米Intelがパソコン向け次世代I/Oアーキテクチャを開発する意向を明らかにした。Intel社のDesktop Platform部門ジェネラル・マネージャのLouis Burns氏が米国時間3月1日に,開発者会議「Intel Developer Forum」の基調講演のなかで「パソコン向けI/Oの新標準技術を今秋までに開発したい」と発言したもの。
Burns氏によれば,PCIに代わる次世代技術として開発するシリアルI/Oは,最大10GHz動作のマイクロプロセサを見据えたもの。I/Oの帯域幅を飛躍的に高める。銅配線の範疇を超え,将来的には光通信技術にも対応させていくという。
アナリストらは,「OEM先は,Intel社の仕様と米Advanced Micro Devices(AMD)が発表した新バス技術『HyperTransport』のどちらを採用するのか選択を迫られることになる」と指摘する。
米Insight 64のアナリストNathan Brookwood氏は,「(新標準策定の)目的やスケジュールなどは非常に評価できるものだが,技術そのものについてはAMD社のHyperTransportと比べ,何ら変わりはないようだ」と話す。
Burns氏やIntel社Enterprise Product部門ジェネラル・マネージャのMike Fister氏は,「他社のI/O技術を採用することも検討したが,やはり新たな標準を一から開発すべきという結論に達した」と説明する。その理由は,「今後5年から10年にわたって利用できるI/O技術が必要。HyperTransportは,PCIをやや上回ってはいるものの,次世代I/Oバスとしては十分でない」(Burns氏)。
次世代サーバーI/Oの開発に関しては,Intel社が主体となって開発していた「Next Generation I/O(NGIO)」と,米IBMや米Compaq Computer,米Hewlett-Packard(HP)が主導した「FutureI/O(FIO)」が対決し,結局1999年8月に統合して「InfiniBand」(当初は「System I/O」)が開発されたという経緯がある。“新たな戦争”を危惧(きぐ)する声に対し,Burns氏は「今度はこうした対決が起こらないよう,業界内で協力体制を敷いていきたい」としている。
あるアナリストは,「(Intel社が『新たな標準技術の策定を』と呼びかけるのを聞いて),思わず拡張バス規格「Accelerated Graphics Port(AGP)」が開発されたときのことを思い出してしまった。Intel社が独自に規定した“オープン”技術のことをね」と話す。AGPは現在流通しているほとんど全てのパソコンに搭載されている。
米MicroDisign ResourcesのアナリストであるPeter Glaskowsky氏は,「Intel社の開発担当者は社内に監禁状態で仕様の完成をせかされていることだろう。仕様を秋にリリースするとすれば,Intel社はそれをOEM企業に促す時間的余裕がほとんどないことになる。(仕様の策定で業界と協力などとは言うが)仕様はもうほとんど出来上がっているはず」と話す。
LSIベンダーなどに聞いてみると,米Adaptecは「仕様やスケジュールのことなど,何も聞いていない」,米National SemiconductorのAdvanced I/O Product Line部門マーケティング担当ディレクターのHazi Friedman氏も「コメントできない」としている。
Intel社の発表はこれだけではない。Burns氏は,IEEE 1394と無線プロトコル802.11の相互運用性についても取り組んでいることを明らかにした。
前出のFister氏によれば,薄型サーバーにモバイル用パソコン技術を取り入れるという。Pentium IIプロセサとモバイル向けチップセット「440BX」「815EM」などを取り入れる。なおIntel社は2000年8月に通信用プラットフォーム開発のZiatech社を2億4000万ドルで買収し,Communications Products部門に組み込んでいる。
Burns氏によれば,このほかIntel社は家庭向け無線ネットワークに関する開発を進めている。IEEE 1394準拠で符号化されたデータを802.11に変換する技術の標準化で,ハードウエア・ベンダーと「協力体制を敷いている」という。
同社の家庭向け通信機器のSenior Staff ArchitectであるSteve Bard氏は,802.11プロトコルを解読するパソコン向けソフトウエア・スタックを開発していることを明らかにした。「2年以内に全てのパソコン向けチップセットに無線機能を組み込む」(Bard氏)。
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