欧州連合(EU)の独占禁止法当局である欧州委員会(EC)はベルギーで7月12日(現地時間),独占禁止法(独禁法)違反行為に対する和解条件の履行が不十分として,米Microsoftに総額2億8050万ユーロ(約3億5600万ドル)の制裁金を科すと決めた。これに対しMicrosoftは米国時間7月12日,「制裁金の決定は不適切」とする声明を発表した。

 声明のなかで,Microsoft顧問弁護士のBrad Smith氏は「当社の履行内容ではなく,和解条件の明確さが真の問題であり,技術文書に対する明快な要求内容は2006年4月になって(ECから)受け取った」としている。「当初ECが提示していた和解条件の不明確さと,当社が過去2年にわたって誠実な取り組みを行ってきたことを考慮すると,いかなる制裁金も適切とは思えない。当社の履行に向けた努力が十分かどうかと,ECの前例のない(巨額の)制裁金が正当かどうかについて,欧州裁判所に問う」(同氏)という。

 和解条件に対する取り組みの一環として,Microsoftは「ECが2004年に決定を下した後,数1000ページの技術文書を提供してきた」と述べる。同社は,「2006年7月24日に予定している7回目にあたる最終の文書提出日に間に合わせるため,24時間体制で300人以上の従業員を割り当てている」とする。

 米メディア(CNET News.com)によると,ECは2005年12月16日から2006年6月20日までの期間に対し,1日当たり150万ユーロ(約191万ドル)の制裁金を科したという。さらに,Microsoftが7月31日までに和解条件を満たさない場合,ECはそれ以降の制裁金を日額300万ユーロ(約381万ドル)に増やす,と報じている。

 MicrosoftとECの独占禁止法違反にかかわる経緯は以下の通り。

 ECは,Microsoftが欧州市場におけるパソコンOSの独占的立場を悪用し,サーバーOSやメディア・プレーヤの販売に関して欧州の独占禁止法に違反したと判断。2004年3月に,同社に罰金4億9720万ユーロ(約5億9659万ドル)のほか,競合他社の製品がWindows搭載パソコンやサーバー上で完全な互換性を確保できるようWindowsのインタフェース情報を120日以内に開示することと,「Windows Media Player」を搭載しないバージョンのWindows OSをパソコン・メーカーに(あるいは直接エンド・ユーザーに)90日以内に提供することなどの業務改善を求める和解条件を決定していた。

 この和解条件に対し,同社は「当社に回復不能な影響を与える」として同年6月7日に控訴。続いて,控訴審の判決が出るまで和解条件の執行延期を求めよう申請した。執行は一時差し止めとなっていたが,裁判所は同年12月に和解条件の発行延期を退けた

 これを受け同社は2005年1月に,Windows Media Playerを搭載しないOSの名称候補9件をECに提出。ECは9件すべてを却下し,「Windows XP Home Edition N」と「Windows XP Professional Edition N」を提案した。同社はこの名称を受け入れ,「Windows XP」の機能変更などを承諾した。

 その後,Windowsプロトコルを他社製ソフトウエアで利用するためのライセンスに関する新ロイヤルティ体系を明らかにするとともに,Media Playerを搭載しないWindowsをパソコン・メーカー向けにリリースすることも発表した。

 一方ECは2005年10月に,和解条件に対する同社の履行状況を監視する際の技術アドバイザとして,コンピュータ科学研究者のNeil Barrett氏を任命した。

 ECは2005年12月に「Microsoftは和解条件を満たしていない」として,1日当たり200万ユーロ(約254万ドル)の制裁金を科すと警告した。これを受け同社は2006年1月,Windows Server製品の和解条件に関係するソースコードをすべて開示する方針を明らかにした。

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