欧州連合(EU)の独占禁止法当局である欧州委員会(EC)は,米Microsoftに科した制裁措置の履行状況を監視する際の技術アドバイザとして,コンピュータ科学研究者のNeil Barrett氏を任命した。ECがベルギーで現地時間10月5日に明らかにしたもの。Barrett氏は直ちに活動を開始する。

 ECは,Microsoft社が欧州市場におけるパソコンOSの独占的立場を悪用し,サーバーOSやメディア・プレーヤの販売に関して欧州の独占禁止法に違反したと判断。2004年3月に,同社に罰金4億9720万ユーロ(約5億9659万ドル)のほか,競合他社の製品がWindows搭載パソコンやサーバー上で完全な互換性を確保できるようWindowsのインタフェース情報を120日以内に開示することと,「Windows Media Player」を搭載しないバージョンのWindows OSをパソコン・メーカーに(あるいは直接エンド・ユーザーに)90日以内に提供することなどの業務改善を求める制裁措置を決定していた。

 Barrett氏は同社と独立した立場からECに技術的アドバイスを行う。同氏の役割について,ECは「制裁の履行状況について公平なアドバイスをすること」としている。

 同社とECの独占禁止法違反にかかわる経緯は以下の通り。

 ECが2004年3月に決めた制裁措置に対し,同社は「当社に回復不能な影響を与える」として同年6月7日に控訴。続いて,控訴審の判決が出るまで制裁措置の執行延期を求めよう申請した。執行は一時差し止めとなっていたが,裁判所は同年12月に制裁措置の発行延期を退けた

 これを受け同社は2005年1月に,Windows Media Player非搭載版OSの名称候補9件をECに提出。ECは9件すべてを却下し,「Windows XP Home Edition N」と「Windows XP Professional Edition N」を提案した。同社はこの名称を受け入れ,「Windows XP」の機能変更などを承諾した。

 その後,Windowsプロトコルを他社製ソフトウエアで利用するためのライセンスに関する新ロイヤルティ体系を明らかにするとともに,Media Player非搭載版Windowsのパソコン・メーカー向けリリースについても発表した。

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