米Microsoftは欧州委員会(EC)が同社に対して下した制裁措置の発令を延期するよう求めていたが,裁判所はその請求を退けた。これを受け,Microsoft社は米国時間12月22日に,「ECの是正命令にはほとんどメリットがない」とのコメントを発表した。

 ECは,Microsoft社が欧州市場におけるパソコンOSの独占的立場を悪用し,サーバーOSやメディア・プレーヤの販売に関して欧州の独占禁止法に違反したと判断。今年3月24日に,4億9720万ユーロの制裁金支払いをはじめ,Windowsのインタフェース情報の開示,「Windows Media Player」非搭載版OSの提供などを命じる制裁措置を発表した。Microsoft社はこれが同社に「回復不能な影響を与える」として6月7日に控訴。続いて,控訴審の判決が出るまで,制裁措置の執行延期を求める申請を行った(関連記事)。

 米メディアの報道(NYTimes.com)によると,欧州第一審裁判所のボ・ベスタードルフ判事は12月22日に,制裁措置を直ちに発令することを決定した。なお,Microsoft社はすでに4億9720万ユーロの制裁金を支払い済みである。ちなみに控訴裁判は今後数年を費やすとみられている。

 Microsoft社は「ECの是正措置は,欧州の競合社および消費者にとって,ほとんどメリットがない。実際,多数のWindows OSユーザーと,Windowsを導入している欧州全土の多数の企業に損害を与えることになるだろう」と言い続けている。「これまで述べてきたように,複雑で技術的な問題を解決するには,(ECの是正措置よりも)もっと良い方法があると信じている」として「和解に向けた話し合いの機会」(同社)への期待をほのめかした。

 また,「当社は裁判所が是正措置の一部あるいはすべてを保留することを望んでいた。しかし(今回それは認められなかったものの)裁判所は,当社の多くの言い分が控訴審で取り上げられるべきであることを認識していることが分かった」と,控訴審に向けての自信もみせている。

 業界では,ソフトウェア情報工業会(SIIA)などが「今回の判決は,消費者に恩恵をもたらす歴史的な一歩だ」(SIIA議長のKen Wasch氏)との声明を発表し,裁判所の決定を支持している。しかし政府監視団体のCitizens Against Government Waste(CAGW)は疑問を投げかける。「ECの是正措置に従えば,Microsoft社はWindows Media Player搭載版と非搭載版の2バージョンをリリースすることになる。これはグローバル市場にとって不必要に負担の大きい規制だ。最も打撃を受けるのは,複数のWindows向けに多額を投じてソフトウエア設計を行わなければならない小規模ソフトウエア開発者だ」(CAGW議長のTom Schatz氏)

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[発表資料(Microsoft社のプレス・リリース)]
[発表資料(SIIAのプレス・リリース)]
[発表資料(CAGWのプレス・リリース)]