欧州連合(EU)の競争法(独占禁止法)に違反したとして米Microsoftの調査を進めていた欧州委員会(EC)は,ベルギーのブリュッセルで現地時間3月24日,同社に対する制裁措置を正式に発表した。4億9720万ユーロ(約6億300万ドル)の罰金支払いなどが含まれる。

 ECは5年にわたって調査を行った結果,Microsoft社が欧州市場におけるパソコンOSの独占的立場を悪用し,サーバーOSやメディア・プレーヤの販売に関して欧州の独占禁止法に違反したと判断した。

 「Microsoft社の違法行為はまだ続いている」として,ECは同社に罰金のほか,競合他社の製品がWindows搭載パソコンやサーバー上で完全な互換性を確保できるようWindowsのインタフェース情報を120日以内に開示すること,「Windows Media Player」を搭載しないバージョンのWindows OSをパソコン・メーカーに(あるいは直接エンド・ユーザーに販売する際に)90日以内に提供することなどの業務改善を求めた。

 「支配力のある企業は,その業務体制の理非曲直によって市場競争を妨害したり,消費者や開発に損害を与えたりしないことを保証する責任がある。今回のECの決断により,市場の公正な競争が回復し,支配的立場にある一企業の将来的運営に対する明確な原則が確立されるだろう」(EC競争政策会長のMario Monti氏)

 これに対しMicrosoft社は,「当社の和解案の方が,ECの裁定より,欧州消費者に多くの選択肢を与え,ソフトウエア企業に多くの商機を提供することができた」とするコメントを,米国時間3月24日に発表した。Microsoft社上級バイス・プレジデント兼法務顧問のBrad Smith氏によれば,同社はルクセンブルグの第一審裁判所に控訴を申し立てる予定である。米メディアの報道(InfoWorld)によると,「この係争は2009年まで続くだろう」とSmith氏はみている。

 なお,米Sun Microsystemsや米RealNetworksが,ECの裁定を支持する声明を同日発表している。ECの裁定について,Sun社法律問題担当バイス・プレジデントのLee Patch氏は,「欧州の消費者だけでなく,世界で高まる競争と開発にとっても重要だ」と述べた。RealNetworks社バイス・プレジデント兼法務顧問のBob Kimball氏は,「メディア・プレーヤを抱き合わせるというMicrosoft社のやり方が違法であると正式に宣告している点で,非常に意義がある」と語った。

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Microsoftの終わりなき訴訟の森

[発表資料(ECのプレス・リリース)]
[発表資料(Microsoft社のプレス・リリース)]
[発表資料(Sun社のプレス・リリース)]
[発表資料(RealNetworks社のプレス・リリース)]