「米Microsoftのデスクトップ・コンピューティング市場における独占状態が,コンピュータを中心とする技術インフラの脆弱性を拡大させており,セキュリティ上の大きなリスクとなっている」。日米欧の大手コンピュータ企業/通信会社で組織する業界団体,米Computer & Communications Industry Association(CCIA)が,Microsoft社の独占状態とセキュリティに関する調査報告を米国時間9月24日に発表した。

 Microsoft社は多数のアプリケーションを自社OSと緊密に統合させ,パソコン分野におけるユビキタス(偏在)化をほぼ達成していることから,世界のコンピュータ・ネットワークは連鎖的で大規模な被害を受けやすくなっているという。広範に普及している製品は,ウイルスやワームなどの攻撃の対象となりやすく,その被害規模も大きくならざるを得ないからだ。

 米国のセキュリティ・コンサルティング会社@StakeのCTO(最高技術責任者),Dan Geer氏は,「コンピューティング・インフラは急速に成長しているが,サイバー攻撃に対する脆弱性はそれを凌ぐ勢いで深刻化している」と指摘した。「Microsoft社が,自社OSと無数のアプリケーションを統合していることが,コンピューティング・インフラの複雑さと脆弱性に拍車をかけている。ほとんどのコンピュータがMicrosoft社のOSに依存しているため,セキュリティ・リスクはおのずと倍加する」(同氏)

 米国土安全保障省は今年7月,Windowsソフトウエアを省内の従業員14万人に支給するために,Microsoft社と9000万ドル規模の5年契約を交わしている。米国政府が大きく依存するWindows製品にさまざまなセキュリティ・ホールが発見されていることから,国防上のセキュリティにも大きな影響を与える可能性があると,CCIAは警告する。

 CCIAは,「米国政府がMicrosoft社に対し,他社製品とうまく連携できる製品の設計と,サードパーティ製品との容易な連携を可能にするコードの提供を要請するべきだ」と述べている。

 「Microsoft社を独占禁止法違反で監視する必要があるのは,単なる経済的な問題からではない。政府がセキュリティ・リスクを増す独占状態の製品を使用するのであれば,独占禁止法を国防的見地からも検討する必要がある」(Geer氏)

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