米Microsoftは,欧州連合(EU)の独占禁止法当局である欧州委員会(EC)が2004年3月に決めた制裁措置への対応策として,Windows Server製品の制裁措置に関係するソースコードをすべて開示する。Microsoft社がベルギーで現地時間1月25日に明らかにした。開示する際のライセンスなど,詳細については伝えていない。

 Windows Serverのソースコード開示について,同社は「2005年12月22日付けの是正命令でECから指摘されたすべての項目を解決するため,自発的に決断した」と述べる。この是正命令に対する回答期限は,2月15日に設定されている。

 ライセンスを取得してソースコードを読むと,Windowsの通信プロトコルに関する正確な情報が得られるという。その結果,「Windowsと相互接続性のある製品の開発方法が,これまで以上に見通せる」(同社)。ただし同社は,ソースコードの閲覧だけを認め,コピーは許可しないとしている。

 米メディア(CNET News.com)では,2005年12月に出した是正命令のなかで,ECはMicrosoft社の対応が不十分ならば1日当たり200万ユーロ(約245万ドル)の制裁金をさかのぼって科すと警告したと報じている。

 同社とECの独占禁止法違反にかかわる経緯は以下の通り。

 ECは,Microsoft社が欧州市場におけるパソコンOSの独占的立場を悪用し,サーバーOSやメディア・プレーヤの販売に関して欧州の独占禁止法に違反したと判断。2004年3月に,同社に罰金4億9720万ユーロ(約5億9659万ドル)を科したほか,競合他社の製品がWindows搭載パソコンやサーバー上で完全な互換性を確保できるようにWindowsのインタフェース情報を120日以内に開示することと,Windows Media Playerを搭載しないバージョンのWindows OSをパソコン・メーカーに(あるいは直接エンド・ユーザーに)90日以内に提供することなどの業務改善を求める制裁措置を決定していた。

 この制裁措置に対し,同社は「当社に回復不能な影響を与える」として同年6月7日に控訴。続いて,控訴審の判決が出るまで制裁措置の執行延期を求めた申請をした。執行は一時差し止めとなっていたが,裁判所は同年12月に制裁措置の発行延期を退けた

 これを受け同社は2005年1月に,Windows Media Player非搭載版OSの名称候補9件をECに提出。ECは9件すべてを却下し,「Windows XP Home Edition N」と「Windows XP Professional Edition N」を提案した。同社はこの名称を受け入れ,「Windows XP」の機能変更などを承諾した。

 その後,Windowsプロトコルを他社製ソフトウエアで利用するためのライセンスに関する新ロイヤルティ体系を明らかにするとともに,Media Player非搭載版Windowsのパソコン・メーカー向けリリースについても発表した。

 一方,ECは2005年10月に制裁措置に対する同社の履行状況を監視する際の技術アドバイザとして,コンピュータ科学研究者のNeil Barrett氏を任命した。

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