国内企業の2006年度通期決算がほぼ出揃った。ITproが決算情報を提供するIT企業45社のうち27社が増収増益となり(年度会計ではない企業については当期業績),景気回復の足取りは徐々に力強くなっているようだ。ただし,市況の変化への対応や構造改革に出遅れた企業の中には,減益や赤字を計上したところもある。業種を問わず,優勝劣敗が鮮明になった決算だった。

 MNPの導入で競争が激化した通信業界は明暗がはっきりと分かれた。契約数を81万件増やしたKDDIが4期連続の増収増益となり,ソフトバンクがボーダフォン買収によって営業利益を倍増させたのに対し,NTTドコモは契約数を63万件減らして増収減益となった。

・KDDIの2006年度決算は増収増益,2010年度に売上高4兆円を目指す
・ソフトバンクは大幅増収増益,「ボーダフォンを買収して良かった」と孫社長
・NTTドコモ決算は増収減益,MNP後の不調を中村社長が総括
・IIJの06年度決算は大幅増収増益,アイピーモバイルについてもコメント
・イー・アクセスの06年度決算は減収増益,「モバイル事業は順調」

 情報通信大手は,まだら模様の決算。日立製作所は,売上高が10兆円超で過去最高となったが,中部電力で発生した原発タービン事故の対応や,ハードディスク事業の不振で当期純損益は327億円の赤字になった。NECは欧州PC市場から撤退したことが響いて減収減益。一方,東芝は海外のパソコン事業の売り上げ増などで増収増益,富士通は金融を中心にしたSI事業や英国のアウトソーシング事業が貢献し,辛うじて増収増益を確保した。

・日立の2007年3月期決算,ハードディスク不調で減益
・NECの2006年度連結決算は“減収減益”,欧州PC市場からの撤退が響く
・東芝の2006年度決算は大幅増益,携帯電話事業は減収・減益
・富士通の2007年3月期決算,営業増益も目標の1900億円には届かず

体質強化が進むSI業界,出遅れた企業も

 SI業界では,元請けとなる大手の優勝劣敗が鮮明に現れた。NTTデータは04年に設定した中期経営計画の目標値の売上高1兆円,営業利益750億円を達成。CSKは情報サービス事業と金融サービス事業で営業利益を前期比約1.5倍に伸ばし過去最高に。中国のオフショア開発によるコスト削減を進めてきた野村総合研究所(NRI)は,売上高3000億円超で営業利益も前期比2割増と好調だった。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC),新日鉄ソリューションズ(NSSOL)なども増収増益だった。

 一方で,TISは大手クレジット会社(JCBと推定)の基幹系システム刷新プロジェクトで計画を大幅に上回る要員の追加配備を迫られ,前期の58億9200万の黒字から一転,8億1800万の赤字を計上した。日本ユニシスはオープン系サーバーの販売不振などで減収増益,富士通ビジネスシステムもハード販売と保守サポート事業が低迷して減収増益だった。

・NTTデータが売上高1兆円を達成,07年3月期決算
・NRIの2006年度連結決算は増収増益,金融向けが好調で売上高3000億円超へ
・CSKの2007年3月期決算,営業利益19%増で過去最高益を更新
・TIS,07年3月期は8億円の純損失
・日本ユニシスの06年度決算は減収増益,ハードと一部サービスが落ち込む
・FJBの2006年度決算は減収増益,ハード販売と保守サポート事業が低迷
・NSWが赤字決算,不採算案件の発生などが響く

 最後にインターネット・サービス業界。ヤフーは,インターネット広告,オンライン・ショッピング,オークションのいずれの事業も順調に売り上げを伸ばし,売上高,純利益共に前期比2割を超える増収増益となった。音楽配信や動画など機能強化し,会員数1000万人を達成したSNSサイトのmixiを手がけるミクシィは,広告売り上げが大きく伸び,前期比2.4倍の大幅増益となった。モバイル分野ではモバゲータウンを運営するディー・エヌ・エーの躍進も目立つ。

 これとは対照的に,楽天は事業の多角化戦略が裏目に出て2007年第1四半期は減収減益のスタートとなった。楽天KCを中心とするクレジット事業は,構造改革の途上にあり,今期は3億4900万円の営業損失を計上。また,前期に62億円の利益を出した証券事業は,相場環境の変化や手数料引き下げなどで約8割の減益となり,グループの収益を直撃した。

・ヤフーの07年3月期決算は増収増益,オーバーチュア子会社化も発表
・ミクシィの2006年度決算,売上高が前年比2.8倍,営業利益が2.4倍の大幅増収増益
・楽天の2007年第1Q決算は減収減益,証券事業の不振が打撃に

 なお,各社の決算情報はフォーカス・サイト「決算&業績動向」にまとめている。そちらも参照して頂きたい。