通信/ネットワーク分野で、2012年にまず大きな話題となるのは、おそらく携帯電話の900MHz周波数帯の割り当て事業者決定だろう。900MHz帯とは、プラチナバンドあるいはプレミアバンドなどと呼ばれることもある、電波の伝搬特性に比較的優れた携帯電話の周波数帯域のこと。地上デジタル放送への完全移行や第2世代携帯電話(2G)の終了に伴う周波数再編によって空く周波数帯の一つだ。再編によって空く周波数には、900MHz帯のほかに700MHz帯がある。
900MHz帯に関しては、総務省が2011年12月14日に割り当て申請の受け付けを開始した。2012年1月27日に締め切り、そこから審査が始まる。2月下旬か3月には割り当て事業者が決まる見込みだ。
900MHz帯の割り当て幅は15MHz×2(上りと下り)で、これを1事業者に割り当てる。15MHz幅×2のうち5MHz幅×2は、2012年7月からの利用が可能。最終的に15MHz幅×2が使えるようになるのは2015年の見込みだ。
一方の700MHz帯は、2011年12月13日に干渉検討結果の報告書案が示され、30MHz幅×2が確保できる見通しとなった。今後のポイントは、この30MHz幅×2を、15MHz幅×2ずつ2事業者に割り当てるのか、10MHz幅×2ずつ3事業者に割り当てるのかという点だ。
700MHz帯は利用可能になる時期が2015年頃からと少し先にはなるものの、割り当ては早々に行う見通しだ。900MHz帯の事業者が決まった後は、今度は700MHz帯の行方が焦点となる。
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900MHz帯はソフトバンクとイー・アクセスの一騎打ち?
これら700MHz帯/900MHz帯の割り当てが大きな関心事となっているのは、現在、携帯電話事業者各社が直面しつつあるトラフィック急増問題を解決するという点で大きな影響があるからである。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの携帯電話事業者4社は、いずれも700MHz帯/900MHz帯の獲得意向を示している。特に一部とはいえ2012年7月からの利用が可能な900MHz帯については、ソフトバンクモバイルとイー・アクセスが強い希望を表明している。
iPhoneをいち早く発売し、他社よりも深刻なトラフィック問題に直面しているソフトバンクモバイルは、孫正義社長が「900MHz帯は当然我々がもらえると信じている」と発言するなど、何が何でも900MHz帯を取りにいく構えを見せる。割り当て申請が始まる前の段階から、鉄塔の新設を開始し、基地局用の機材や工事人の手配もしているという。
一方のイー・アクセスも、比較審査について総務省に要望書を提出したり孫氏の発言を牽制したりするなど、いかに900MHz帯が同社に必要かを懸命にアピール。加入者数が桁違いに少ないとはいえ、現状の保有帯域も1.7GHz帯の15MHz幅×2のみと少ない同社にとっては、今後の成長戦略を描くためにも追加帯域が是が非でも欲しいという立場だ。
これら2社に対して、NTTドコモとKDDIも一応は900MHz帯の獲得意向を見せるものの、本命は700MHz帯と予想される。というのも、比較審査について総務省は、「周波数の割り当て状況(有無および差違)とひっ迫状況を勘案する」とうたっているため、ソフトバンクモバイルやイー・アクセスを差し置いて割り当てを受けることは難しいと考えられるからだ。
NTTドコモとKDDIが900MHz帯に手を上げたとしても、事実上、ソフトバンクモバイルとイー・アクセスの一騎打ちとなる公算が大きい。
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