フィーチャーフォンでもスマートフォンと同じようなことができるかもしれないが、本質的に扱える情報量、接することができる情報量がまったく異なる。こう説明するのは、野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 情報通信チーム・ヘッド マネージング・ディレクターの増野大作氏だ。そしてスマートフォンの増加に伴い、そのトラフィックも膨大なものになっていく。同氏に日本市場のこれまでとこれから、そして将来のトラフィック対策などを聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro


野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 情報通信チーム・ヘッド マネージング・ディレクター 増野大作氏
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 情報通信チーム・ヘッド マネージング・ディレクター 増野大作氏

 シンプルな話だが、iPhoneのユーザーエクスペリエンスはかなりいい。ものすごいユーザーエクスペリエンスの向上に対して、ユーザーはほんの少しお金を余分に払う。ユーザーはシビアなので、ちょっとくらい良くなったところで、余分にお金を払おうとはしない。2010年以前の何年かは、シーズンごとにフィーチャーフォンが出ていたが、だんだん気持ちも興奮せず、ルーティン化していた。そんなことにユーザーが余分なお金を払うわけない。予約しようなんてことも起こらなかった。

 フィーチャーフォンでもスマートフォンと似たようなことができたかもしれない。だが、ユーザーと情報をつなぐインタフェースの部分、本質的に扱える情報量、接することができる情報量がまったく異なる。スマートフォンは、起動性、操作性に優れている。インタフェースは接点。接点の向こう側の世界がフィーチャーフォンとスマートフォンでは全然違ってくる。

「モバイルでなんでもやる」ということを10年以上やってきた国

 日本では2009~2010年には、スマートフォンと言えばiPhone以外は売れなかった。ただこれは携帯電話事業者が出さなかったから。それだけの理由だと思う。携帯電話事業者はそんなに需要があるとは思っていなかった。そう思ったのは、既にフィーチャーフォンで似たような世界が現実に動いていたからではないか。

 実際、フィーチャーフォンでiモードなどのサービスがあったのはすごいこと。フィーチャーフォンでソーシャルゲームを楽しむユーザーがいたから、日本のモバイルゲーム市場が存在しているわけであって、それはスマートフォンに移行したからではない。

 日本は「モバイルでなんでもやる」ということを10年以上やってきた国。そういうことに慣れていて、何千億という市場がモバイルコンテンツサービスで動いていた。当初はそれをスマートフォン上に移し替えるのに失敗するのではと思っていたが、今はみんなそこに移行しようとしている。

 iモードをやっていたことの価値は、何千万というユーザーが育ち、その人たちが実際にそこでお金を使うということ。マネタイズに関しては、日本のモバイルは10年の経験値がある。モバイルでマネタイズしやすいユーザーの数、カルチャー、課金の仕組みというのがこの10年間できちんと作られていて、ある意味そのうえにフリーライドできる。そんなきれいな仕組みは世界中どこにもない。

 今後はこうしたモバイル市場が普遍的にグローバルでも起こってくると思う。グーグルもオフィシャルに言っているが、今新しいサービスは“モバイルファースト”。世界中のサービスを提供する人が、最初はスマートフォン向けに作る。今はとっくにそういう世界に入っていている。実際、日本より米国、アジアの方がスマートフォンは普及しているし、ユーザーはがんがん使ってますよ。