ソフトバンクモバイルは総務省が実施した「700/900MHz帯移動通信システムに係る参入希望調査」において、「900MHz帯の割り当てを希望する」と回答した(発表資料へ)。900MHz帯を希望する理由や獲得した場合の使い方について、ソフトバンクモバイル 電波制度室 室長の石原弘氏に聞いた。

Q.900MHz帯を希望した理由は何か。
A.加入者の増加や1人当たりのトラフィックの増加で周波数がひっ迫している。一番の理由は、2012年7月から利用できる900MHz帯を使い、いち早くこの周波数のひっ迫に対処することが必要と判断したことだ。この他にも郊外や山間部などで電波の届くエリアを拡大することや、大規模災害時に電力供給が停止しても24時間以上稼働できる900MHz帯基地局で大きなエリアをカバーできるようにする災害対策にも使いたいと考えている。

Q.周波数のひっ迫は、申請した4社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス)とも理由に挙げており、大差ないのではないか。
A.各社が持つ周波数帯1MHz当たりの加入者数を計算すると、ソフトバンクモバイルが87万人/MHzなのに対して、NTTドコモは83万人/MHz、KDDIは74万人/MHz、イー・アクセスは22万人/MHzとなっている。ソフトバンクモバイルが最も周波数がひっ迫している。参入希望調査では、「割り当てを希望する事業者は1MHz当たりの加入者数が50万人以上であること」を基準にすべきと回答した。

Q.1MHz当たりの加入者が多いのは理解するが、例えばイー・アクセスのユーザーはデータ通信を利用する比率が高い。1人当たりの重み付けが異なるのではないか。
A.重み付けを当社も考えたが、トラフィック量を使った比較基準を作るのは難しいのではないか。例えば各社1人当たりのトラフィック量を算出するにしても、携帯電話用の電波を使わず、公衆無線LANを使ってデータをオフロードしている分、またはフェムトセルを使って固定回線にオフロードしている分はどのように計算すればいいのか、などそう簡単な問題ではない。

Q.競合3社は導入システムにLTEを挙げているが、ソフトバンクモバイルは当初はW-CDMAを高速化したHSPA+、2015年にLTEとしている。どのような意図があるのか。
A.まずW-CDMAを導入するのは、希望理由にもあるように既存の3Gシステムのトラフィック増加に対処したいからだ。具体的に言えば、900MHz帯を使えるようになれば、Band8で動く既存のiPhoneはプラチナバンドである900MHz帯を使って通信できる。このことのインパクトは大きい。LTEで通信する端末を使う人は今後増えるだろうが、iPhoneはすでに多くのユーザーがいる。割り当てられた900MHz帯をもっとも早期に、かつ効率的に活用できるのがわが社だと考えている。
 LTEを導入するにしても、2012年7月の時点で利用できるようになる上下各5MHz幅ではスペックを生かせないという理由もある。また隣接システムとの間で、予期せぬ影響があるかもしれないため、まずは3Gシステムで隣接システムと協調しながら使う。LTEは時期を慎重に見極めるという意味も含めて、2015年をメドにしている。

Q.割り当てる事業者の決定時期の前倒しを要望しているのはなぜか。
A.割り当てる時期が早くなれば、それだけ早くエリア整備に取りかかれるためだ。できれば2011年中を希望する。900MHz帯を利用できるのは2012年7月以降だが、利用開始日から間をおかずに900MHz帯を使えれば貴重な900MHz帯の有効利用にもなる。わが社は利用開始から全国各地域において、1年間で人口カバー率70%という方針を示している。

Q.900MHz帯の割り当てを希望し、700MHz帯は希望しないのか。
A.参入希望調査はあくまで調査であり、調査の回答内容によって実際の周波数割り当ての申請に影響するものではないと総務省は言っている。参入希望調査で900MHz帯と書いたのは、900MHz帯をぜひとも欲しいという考えを示したい意図が強い。実際に700MHz帯も希望するかは、総務省が開設指針を示してからでないと決められない。