米IBMは複数の研究/教育/慈善団体とともに,余っているパソコンの演算能力を世界中から集めて人道的な研究に活用するグリッド・コンピューティング活動「World Community Grid」の運営を開始した。IBM社が米国時間11月16日に明らかにしたもの。協力を希望するボランティアは,World Community GridのWebサイトから無料の対応ソフトウエアをダウンロードして活動に加わる。現在の対応OSは,Windows 98/ME/2000/XP。

 World Community Gridは,AIDS/HIV,がん,アルツハイマーなどにかかわる遺伝情報の解析,自然災害の予測精度向上,食料/飲料水の安定供給に関する研究などを支援するため,グリッド・コンピューティング環境を提供する。IBM社は,環境構築に必要なハードウエア,ソフトウエア,技術サービス,ノウハウを寄付したほか,ホスティング,メンテナンス,サポートも担当する。

 最初に手がける研究は,非営利研究組織Institute for Systems Biologyが後援する「Human Proteome Folding Project」。人間を対象としたプロテオーム解析(遺伝子によって生成されるタンパク質の機能/構造に関する研究)を行い,マラリアや結核の原因究明/治療法開発につながる計算を行う。

 今後の研究テーマは諮問委員会World Community Grid Advisory Boardが選定する。1年間に5~6件の計画を実施していく予定。同委員会の主なメンバーは,米国立衛生研究所(NIH),慈善財団のDoris Duke Charitable FoundationおよびMarkle Foundation,医療関連の非営利団体Mayo Clinic,オックスフォード大学,世界保健機構(WHO),国連開発計画(UNDP)。

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