米IBM,米United Devices,米Accelrysが米国時間2月5日に,天然痘の治療薬開発を目的とするグリッド・コンピューティング計画「Smallpox Research Grid Project」を発表した。同計画によって得られた成果は,米国国防総省の国防長官局(OSD)に提出する。

 世界保健機構(WHO)と米国の疫病管理予防センター(CDC)によると,現在のところ天然痘に対する治療方法は存在せず,唯一の予防手段はワクチン接種を受けることという。しかし,WHOが天然痘を撲滅したことから,定期的な予防注射は行われていない。

 Smallpox Research Grid Projectでは,ボランティアを募り,世界中から数百万台のパソコンを登録してもらう。そして,グリッド・コンピューティング技術を適用し,各パソコンが動作していない時間を利用して,3500万種類ある治療薬候補の分子および数種類のタンパク質と天然痘ウイルスとの化学的な相互作用を解析する。

 解析を行うのは,英国のOxford UniversityおよびEssex Universityの研究者や,カナダRobarts Research Institute,米Sloan-Kettering Cancer Center,カナダThe University of Western Ontarioに所属する天然痘の専門家である。

 Smallpox Research Grid Projectに協力を希望するボランティアは,まず「Grid.org」のWWWサイトからスクリーン・セーバーをダウンロードする。同スクリーン・セーバーは,パソコンの空き時間に処理を行い,研究所で行う解析作業の一部を分担することになる。処理が完了したら結果をUnited Devices社のデータ・センターに送信し,新たなデータを受け取って解析を繰り返す。

 同計画は「Grid.org」のWWWサイトにおいて,生物兵器を使ったテロ行為に対抗するための公開研究グリッド「PatriotGrid」に分類されている。

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