分散したパソコンをネットワークで接続し、単一の処理を実行する形態。通常は、パソコンの空き時間を利用して処理を実行する。企業向けのソフトも開発が進んでいる。

 「地球外知的生命を探せ!」。このようなプロジェクトが、1999年から全世界規模で展開されているのをご存じでしょうか。

 「SETI@ホーム」と名付けられたこのプロジェクトは、プエルトリコにある世界最大の電波望遠鏡が受信したデータのなかから、意味のある人工的なパターンを持った情報を探し出そうというものです。実際の処理は、データを片っ端から検索するので、高性能なコンピュータを必要とします。

 このプロジェクトで採用したのが、「グリッドコンピューティング」と呼ばれる仕組みです。インターネットを介して膨大な数のパソコンを利用し、単一の処理を実行する形態です。

◆効果
空き時間を有効活用

 このプロジェクトが成果を上げるか否かは、全くの未知数です。このため、大きなコストをかけるわけにもいきません。

 プロジェクトを低コストで進めるために、SETI@ホームの中心となっている米国カリフォルニア大学バークレー校は、インターネットを介して一般の家庭にある膨大なパソコンを利用する方式を採用しました。利用者がパソコンを使っていないときに、データを検索します。検索対象のデータのダウンロードと検索結果の報告は、いずれもインターネットを通して、カリフォルニア大学のサーバーとやり取りします。

 グリッドコンピューティングには明確な定義はありませんが、一般にはネットワークに接続されたパソコンの空き時間を利用して単一の処理を実行する仕組みを指します。こうした処理形態のメリットは、コンピュータ資源を有効活用できることです。SETI@ホームの場合、この7月時点で全世界で約380万人がプロジェクトに参加しています。

◆事例
商業ソフトの開発も

 SETI@ホーム以外では、米インテルと米ユナイテッド・デバイセズが、ガンたんぱく質の遺伝子解析のために立ち上げている「UDエージェント」プロジェクトがグリッドコンピューティングを採用しています。このプロジェクトも、インターネットを介してデータのダウンロードと検索結果の送信を実行しています。

 このほか、企業内でグリッドコンピューティングを利用するための研究開発も進んでいます。オフィス内にあるパソコンの空き時間を利用して、技術計算や統計処理といった社内業務を実行するものです。米IBMや米サン・マイクロシステムズが、このためのソフト開発を進めています。

 両社のソフトとも、通常のOS(基本ソフト)が稼働するコンピュータに搭載するだけでグリッドコンピューティングを実現するものです。

吉川 和宏 kyoshika@nikkeibp.co.jp