米Xerox傘下の米Palo Alto Research Center(PARC)は,インクジェット・プリンタと似た装置を使い,プラスチック製半導体によるトランジスタ・アレイの製造に成功した。PARCが米国時間10月28日に明らかにしたもの。

 同研究所では,「現在の真空蒸着とフォトリソグラフィによる半導体製造プロセスをこの手法に変えると,アクティブ・マトリクス・ディスプレイ用バックプレーンの製造コストを低減できる」としている。「さらにこの手法は,壁並みの大きさのテレビ,壊れない携帯電話機用の画面,丸められるディスプレイや電子ペーパーなど,まったく新しい分野を開拓するだろう」(同研究所)

 印刷技術を応用した半導体の作成は,2段階の手順で行う。まず,ポリマー製“インク”をサブストレートに直接吹き付けておく。続いてサブストレート上にパターンを刻んだマスクを重ね,不要な部分を取り除くことで目的の回路を形成する。この製造方法は,柔らかな素材と硬い素材のいずれのサブストレートにも適用できる。

 この製造方法のポイントは,「(マスクとサブストレートなど)各層を重ねる位置を高い精度で決定すること」(同研究所)である。そこで同社は,特許取得済みのコンピュータ画像処理システムを利用して,プリンタを制御したという。「こうすることで,柔らかな素材のサブストレートを使った場合に湾曲や変形が発生しても,正確な位置合わせが行える」(同研究所)

 “印刷”に使ったインクは,ポリチオフェンを主原料とする半導体的特性を持つポリマーで,Xerox社のXerox Research Centre of Canada(XRCC)が開発した。

 なおこの研究は,有機電子素材と大面積電子デバイスの開発を目的に,PARC,XRCC,米Motorola,米Dow Chemicalが共同で進めている活動の一環という。米国標準技術研究所(NIST)が資金を援助している。

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