米IBMは,薄いシリコン/絶縁膜構造(SOI)ウエーハ上でシリコン・ゲルマニウム(SiGe)製バイポーラ・トランジスタの形成に成功した。同社が米国時間9月30日に明らかにしたもので,「最新の薄膜シリコン・バイポーラ素子に比べ,性能が4倍高く消費電力が5分の1で済む無線機器用LSIを製造できる」としている。

 同社は,「無線分野拡大の影響で,機器メーカーは演算と高周波通信の両機能に対応する素子を使うようになる」と指摘する。現在の相補型金属酸化被膜半導体(CMOS)製LSIは演算機能の基盤であり,SiGe製バイポーラ素子は無線周波数を使った通信やアナログ信号処理に適している。そこでLSIメーカーは,無線機器の信頼性を向上させるため,演算機能用と通信機能用のLSIを別々に提供するのではなく,両機能を1つのLSIで賄えるSiGe製バイポーラCMOS(BiCMOS)を製造してきた。

 一般的にCMOS素子は,薄膜SOIウエーハを使うと処理性能が向上する。しかし同ウエーハ上にSiGe製バイポーラ・トランジスタを作る技術は存在しないため,単一SOIウエーハ上でCMOSとSiGeバイポーラ・トランジスタを組み合わせることは不可能だった。

 同社の研究開発部門であるSemiconductor Research and Development Center(SRDC),IBM Research,IBM Microelectronics Divisionの研究者/開発者はこの問題を解決し,単一の薄膜SOIウエーハ上にSiGe製バイポーラ・トランジスタを形成する技術を開発した。「これにより,演算/通信性能を同時に最大化できる」(同社)

 同技術について,IBM Research科学技術担当副社長のT. C. Chen氏は「5年以内に実用化され,ビデオ・ストリーミングが利用可能な携帯電話機などで使われるだろう」とみる。

 なお同社は,フランスのツールーズで開催中の2003 Bipolar/BiCMOS Circuits and Technology Meetingで同技術の詳細を紹介している。

◎関連記事
米IBM,半導体の性能を数10%向上させる製造技術を開発,詳細は12月のIEDMで発表
米IBMがゲート長6nmのトランジスタを開発,「集積度は現在の100倍以上に」
米IBMが新たなカーボン・ナノチューブ製トランジスタを開発,「最適化前でも現行のトランジスタの性能を上回る」
米モトローラが新しい不揮発性メモリー技術を発表,「小型化しても低電圧動作が可能に」
米インテルが3次元構造を持つトライゲート・トランジスタを開発,「ムーアの法則のペースを保つ」
「ナノテクノロジでムーアの法則の延命と適用範囲拡大を図る」,米インテルがIDFで講演
米AMDが「現行品より30%高速」なPMOSトランジスタの開発に成功,「詳細は6月のVLSI Symposiumで」
米AMDがゲート長10nmのダブルゲートFinFETを開発,「集積度は現行トランジスタの10倍に」

[発表資料へ]