米IBMは米国時間9月9日に,半導体素子の性能向上と省電力化を実現する2つの半導体製造手法について発表した。1つはストレインド・シリコンとシリコン/絶縁膜構造(SOI)を直接組み合わせるSSDOI技術。もう1つは,相補型金属酸化被膜半導体(CMOS)の製造時に2種類のシリコン・サブストレート層を同一ウエーハ上で使用する技術である。

 ストレインド・シリコンでは,シリコン・ゲルマニウム(SiGe)の下位層とともに一番上にあるシリコン層を引き伸ばすことで,電子の移動度を高められる。これまでの研究でIBM社は,「ストレインド・シリコンを使うことで,20%~30%性能を向上させることができた」としている。

 ただしこの方法は,SiGe層があるため製造が難しいという。そこで同社は,「SiGe層を迂回する極めて薄いSSDOI構造を持つトランジスタを初めて製造し,「高い電子移動度を実現すると同時に,製造時の問題を解決した」(同社)。

 さらに同社は,2種類のサブストレートを1つのウエーハで組み合わせることで,正孔(ホール)の移動度が従来技術で製造したCMOSに比べ2.5倍高い素子を開発したという。「これにより,CMOSの性能を40%~65%高められる」(同社)

 両技術について,同社の研究開発部門IBM Research科学技術担当副社長のT. C. Chen氏は「標準的なウエーハ処理手法を使って比較的簡単に導入できる」と述べる。「どちらか一方の技術を使うことで,性能向上と省電力化を達成できる。両方を組み合わせれば,さらなる性能向上と省電力化が可能だ」(同氏)

 同社は2つの技術の詳細を,2003年12月7日~10日にワシントンD.C.で開催されるInternational Electron Devices Meeting(IEDM)で発表する。論文の題名は,「Fabrication and Mobility Characteristics of Ultra-thin Strained Si Directly on Insulator(SSDOI)MOSFETs」と「High Performance CMOS Fabricated on Hybrid Substrate with Different Crystal Orientations」。

◎関連記事
米IBMと米AMDがLSI製造技術の開発で提携
米IBMがゲート長6nmのトランジスタを開発,「集積度は現在の100倍以上に」
米IBMが新たなカーボン・ナノチューブ製トランジスタを開発,「最適化前でも現行のトランジスタの性能を上回る」
米モトローラが新しい不揮発性メモリー技術を発表,「小型化しても低電圧動作が可能に」
米インテルが3次元構造を持つトライゲート・トランジスタを開発,「ムーアの法則のペースを保つ」
「ナノテクノロジでムーアの法則の延命と適用範囲拡大を図る」,米インテルがIDFで講演
米AMDが「現行品より30%高速」なPMOSトランジスタの開発に成功,「詳細は6月のVLSI Symposiumで」
米AMDがゲート長10nmのダブルゲートFinFETを開発,「集積度は現行トランジスタの10倍に」

[発表資料へ]