米IBMは,ゲート長6nmのシリコン製トランジスタを開発したと米国時間12月9日に発表した。「6nmというゲート長は,現在の最新技術で生産可能なトランジスタの10分の1以下。実際に動作するシリコン製トランジスタとしては世界最小」(IBM社)としている。

 IBM社の研究開発事業であるIBM Researchの科学技術担当副社長のRandy Isaac氏は,「動作可能なトランジスタをこのサイズで作れるということは,コンピュータ用LSIに現在の100倍以上多くのトランジスタを入れられることを意味する」と説明する。

 トランジスタの大きさを小さくする,つまりゲート長(トランジスタのオン/オフを切り替えるためのスイッチの大きさ)を短くすると,LSIの性能を改善でき,動作を高速化できる。同時に,製造コスト削減とオン/オフ切り替え時の消費電力低減も可能となる。

 IBM社は,後光インプラント技術と波長248nmのリソグラフィーを使ってSOI(Silicon-On-Isulator:シリコン/絶縁膜構造)ウエーハ上にシリコンを形成し,トランジスタ回路を製造した。このシリコンの厚みは4nmから8nmと非常に薄いが,正しくオン/オフ動作を行えたという。

 さらに同社は,より強力な後光インプラントにより,厚さ4nm,ゲート長6nmという「史上最小」(同社)の実際に動作するMOSFET(モス電界効果トランジスタ)の製造にも成功した。

 なおこのトランジスタの詳細について同社は,12月9日から11日にかけてサンフランシスコで開催されるInternational Electron Devices Meeting(IEDM)において,“Extreme Scaling with Ultra-thin Silicon Channel MOSFETs”と題する論文で発表する。

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