米Motorolaの研究部門Motorola Labsが,カーボン・ナノチューブ(CNT)の製造手法を開発したと米国時間7月1日,発表した。Motorola社では,「ナノ放射ディスプレイ(NED)と呼ぶ技術により,プラズマ/液晶ディスプレイよりも高画質の大型平面ディスプレイ(FPD)を,より低コストで製造できる」と説明する。

 CNTとは,炭素原子を直径1nm(10億分の1m)未満のチューブ状に結合させた分子。FPDなどさまざまな用途に合わせて調整可能な独特の性質を持つ。Motorola社は,このCNTを低温で生成する手法を開発した。「低温で生成できることは,商用素材にとって重要な条件といえる。というのも,こうした素材はガラスやトランジスタに接着する必要があり,熱に弱いからだ」(同社)

 さらに同社は,素材表面にCNTを正確に配置する手法と,長さと直径を制御する手法も確立した。これにより,メーカーは分子レベルで製品を設計でき,CNTの持つ特定の性質を強められるという。

 「当社の開発した手法を使うと,サブストレート上に直接CNTを生成できる上,間隔,サイズ,長さを制御できる。その結果FPDで電子放射,輝度,色純度,解像度の最適化が可能となり,高画質を得られる」(同社)

 同社では「NEDを応用すると,50インチ以上の大きさで厚さ1インチ(約25.4mm)の壁掛け平面テレビを,比較的近い将来に低コストで実現できる」としている。さらに同技術は,屋外広告用やスポーツ・イベントなどで使うより大きなディスプレイにも適用できるという。

 なお現在同社は,NED技術の商業化ライセンスについて欧州やアジアの電子機器メーカーと交渉を進めている。

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